シリコンインゴットをダイアモンドワイヤーで切断して太陽電池用シリコンウェーハを製造する際、シリコンウェーハとほぼ同じ重量のシリコン切粉が生成し、現在は産業廃棄物として廃棄されている。本研究では、このシリコン切粉からシリコンナノパーティクルを形成し、それを太陽電池に応用した。 シリコン切粉をアセトンで洗浄して、クーラント等の有機物を除去した。その後、粉砕法を用いてシリコンナノパーティクルを形成した。形成したシリコンナノパーティクルは約5nmに最大の体積分布を持った。X線回折パターンの測定から、シリコンナノパーティクルは結晶になっていることがわかった。HF処理を施したシリコンナノパーティクルは空気中で安定に存在し、1週間の放置によって形成される酸化膜の膜厚は、0.8nm程度であった。p型シリコンの切粉から形成したシリコンナノパーティクルを含むペーストをn型単結晶シリコン上に塗布、乾燥して太陽電池構造とした。この構造は、良好な整流性を示すと共に、光照射によって発電を行なった。シリコンナノパーティクルを硝酸によって酸化しその後熱処理することによって、接触抵抗が格段に低減して変換効率が向上した。硝酸酸化前の太陽電池の理想因子は2.2以上と大きかったが、硝酸酸化と熱処理によって1.7に減少した。硝酸酸化によってシリコンナノパーティクルの表面に約1nmのSiO2膜が形成され、加熱処理によってその一部が融解して隣接するシリコンナノパーティクルと接触する。光電流は極薄のSiO2膜をトンネル伝導するため問題なく流れる。さらに、硝酸酸化膜は、シリコンナノクリスタル層を効果的に表面パッシベーションして、電子とホールの再結合を防止している。理想因子の低減は、直列抵抗成分の低減及び再結合の防止によるものと結論した。
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