前年度の研究において、電解法を用いた局所pH制御によって基板近傍のみにシリカの析出が可能であることを明らかにした。しかしながら、この方法で析出させたシリカ中でゼオライト骨格構造を有する部分はごく一部であったため、他に二つのゼオライト薄膜の形成法について検討を行った。一つはゼオライト粉末を分散させた溶液中に基板を浸漬し、電気泳動法によって薄膜を形成する方法であり、もう一つはゼオライト粉末のペーストを作製して物理的に塗布する方法である。特に電気泳動法によって薄膜を形成する場合、電圧を適切に制御すると、ゼオライト粉末の形状や粒度分布にもよるが、非常に緻密な薄膜が得られた。本年度はさらに、ゼオライトの細孔内にあらかじめ銅イオンや銀イオンなどの酸化還元反応に対して活性なイオン種を導入しておき、上記の方法を用いることで、電気化学的に活性なゼオライト薄膜を得ることに成功した。また、ゼオライト薄膜中に導入させた遷移金属イオンは、外部電源を用いて可逆的に酸化還元をすることが可能であることを明らかにした。この遷移金属導入ゼオライト薄膜はエネルギー貯蔵用材料や高い活性を有する触媒材料などとして利用できる。またこの方法を利用すれば遷移金属ナノ粒子を合成することが可能ではないかと考えているが、そのためには今後細孔内における遷移金属イオンの還元反応がどのような機構で進行するのかを詳細に検討する必要がある。
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