研究概要 |
CuSn合金めっき技術を研究する過程において、我々はナノツリー構造を見出した。これは直径数十nmの枝が次々と直交して分岐してあたかもツリーのような構造となったものである。まずCuイオンとSnイオンを含むめっき浴において、下地Pt電極上でのCuSn合金めっき膜の構造のめっき電位依存性を評価したところ、めっき電位により形成した膜の形状が著しく異なることが明らかとなった。 めっき電位が-0.59Vのときには針状の結晶が成長していたのに対し, -0.60Vでは枝分かれしてナノツリー構造が得られ、またわずかに電位を下げて-0.61Vとした場合, ナノツリーの枝分かれはみられたが、直径方向への成長が起こり, 枝が太くなった。このように, ナノツリー構造が得られる電位は非常に狭い範囲であることがわかった。 また、ナノツリーが得られた試料の元素分析をEDXで行ったところ, Cu:Sn=81:19となった. Cu-Snの2元合金ではCu4Sn1という相が存在するが、ナノツリーはその組成からわずかずれた元素組成である。ナノツリーの一本一本の枝について透過電子顕微鏡観察を行ったところ、単結晶でありまた立方格子の中に長周期構造が混在した複雑な結晶構造であることが分かった。また、サイクリックボルタンメトリ測定において、ナノツリーが形成される電位付近では電流―電位特性が負の微分抵抗を持つような形状となっていることが示され、ナノツリー形成と負の微分抵抗特性とが何らかの相関関係を持つことが示唆された。また、めっき時の溶液撹拌強度を変えると、ナノツリーの枝分かれ方が変化することも示された。
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