研究課題/領域番号 |
25600050
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
横山 崇 横浜市立大学, その他の研究科, 教授 (80343862)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 単一分子計測 / 蒸着 / 生体分子 / 走査型トンネル顕微鏡 |
研究概要 |
本研究の目的は、超高真空・低温・走査型トンネル顕微鏡(STM)を用いて、タンパク質などの生体分子を単一分子レベルで構造解析することであり、分子の真空蒸着法としてエレクトロスプレーイオン化法を利用する。エレクトロスプレーイオン化法は、先鋭化したキャピラリーに高電圧を加え、そこにターゲット分子を溶かした溶媒を注入することで、テイラーコーンを形成してイオンビームがスプレーされる現象を利用している。そして、そのイオンビームを真空中に導入することで、基板表面への蒸着を可能にする。25年度は、スプレー形成の条件や蒸着の条件を探査し、基板上に溶媒などの不要な分子が蒸着されず、目的の分子のみが蒸着される条件を探査した。条件探査には、化学構造が既知で、純度の高いオリゴチオフェンを用いた。用いたオリゴチオフェン分子は、10nmから100nm程度の鎖長を持つ機能性有機分子であり、最適な蒸着条件を探るとともに、分子形状の鎖長依存性も調べた。 実験の結果、イオンビーム生成において、キャピラリーに印可する電圧がテイラーコーン形成に寄与し、溶液を流す流量がプルーム形成に寄与することが分かった。これらの条件を最適化することで、微細イオン液滴を再現性良く形成させることができるようになった。さらに、基板への蒸着において、5分程度の蒸着を複数回行うことで基板上に不純物が残留せず、目的分子だけの蒸着が出来ることが明らかになった。これより、個々の長鎖オリゴチオフェン分子の形状が、STM観察によって明らかになった。これらの結果は、The Journal of Physical Chemistry Cに報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度は、スプレー形成の条件や蒸着の条件を探査し、基板上に溶媒などの不要な分子が蒸着されず、目的の分子のみが蒸着される条件を探査した。条件探査には、化学構造が既知で、純度の高いオリゴチオフェンを用いた。用いたオリゴチオフェン分子は、10nmから100nm程度の鎖長を持つ機能性有機分子であり、最適な蒸着条件を探るとともに、分子形状の鎖長依存性も調べた。 実験の結果、イオンビーム生成において、キャピラリーに印可する電圧がテイラーコーン形成に寄与し、溶液を流す流量がプルーム形成に寄与することが分かった。これらの条件を最適化することで、微細イオン液滴を再現性良く形成させることができるようになった。さらに、基板への蒸着において、5分程度の蒸着を複数回行うことで基板上に不純物が残留せず、目的分子だけの蒸着が出来ることが明らかになった。これより、個々の長鎖オリゴチオフェン分子の形状が、STM観察によって明らかになった。これらの結果は、The Journal of Physical Chemistry Cに報告した。 以上の結果は、ほぼ予定通りの進行である。さらに不純物の残留をほぼ完全に防いだことは、詳細な単一分子計測のためには重要となり、予定以上の成果とも言える。
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今後の研究の推進方策 |
長鎖オリゴチオフェン分子のエレクトロスプレー蒸着および、その高分解能・走査型トンネル顕微鏡(STM)観察に成功したので、26年度はその対象を生体分子に移行させる。生体分子は有機分子と比べて純度が低い上に、構造の多様性が大きいので、より慎重な実験が必要になる。また、用いる溶媒も、揮発性有機溶媒から水溶液となり、低蒸気圧のために基板に残留する可能性も高くなる。そこで、26年度は、水溶液に適したスプレー条件を再探査し、最適な蒸着条件を探る。また、用いる生体分子としては、DNAやグルカゴンなどを考えており、手に入るサンプルの純度や構造の多様度などを加味して優先順位を決める。これらの生体分子をSTMによって単一分子計測することで、個々の分子の構造を明らかにして行く。
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次年度の研究費の使用計画 |
エレクトロスプレー蒸着装置の改造を計画していたが、実験が予想よりも上手く進行していたため、改造を先延ばしにし、その状態でできる実験を多く行った方が良いと判断した。 25年度に計画していたエレクトロスプレー蒸着装置の改造を行う。
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