研究課題
ナノメートルサイズの単粒子の運動を細胞質溶液内で可視化計測した。細胞質での生体高分子間の化学反応は、分子混雑、局所閉じ込め、細胞質流動、遷移的な粒子間相互作用などによって、単純なブラウン運動(熱拡散)からは、相当に逸脱している可能性が示唆されており、そのような逸脱は、分子間の反応キネティクスに様々な影響を与え、細胞機能に影響する可能性がある。直径50 nmの蛍光シリカ粒子を、ヒト肺癌由来の培養細胞MCF-7に電気穿孔法により導入し、高速カメラを接続した蛍光顕微鏡を用いて、細胞質内の1粒子運動を1 msのフレームレートで観測した。FCSによる可動粒子の平均運動計測では、粒子は1 um2/sの側方拡散係数を持って、~0.1 um3の計測空間近傍を単純拡散運動していることが分かっている。1粒子可視化計測では、可動粒子の運動を平均60 ms追跡できた何らかの細胞質内構造に固く吸着したと考えられる約3割の静止成分を除外すると、6個の細胞から994個の可動粒子の運動を観測して、それぞれの粒子の運動モードとパラメータ値を推定した。その結果、単純拡散成分が56%で拡散係数が0.86 um2/s、平均50 msの計測時間中には410 nmの範囲を運動する。他の25%は100 nmの範囲に閉じ込められて拡散係数17 um2/s(この値はover estimationの可能性が高く、位置精度の向上が必要である)で運動しており、残りの20%は半値全幅80 nmのポテンシャル中で0.3 pN/nmのバネに繋がれた拡散運動を行っていると推定された。輸送速度を持つ運動をする粒子は観察されなかった。単純拡散およびバネ拡散運動から細胞質の粘度は0.01 Ps*sと求められ、水の10倍の値であった。以上の結果は、細胞質内の構造・環境の多様性を示している。
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