研究課題/領域番号 |
25600052
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
細川 千絵 独立行政法人産業技術総合研究所, 健康工学研究部門, 主任研究員 (60435766)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 光ピンセット / ナノバイオ / 表面プラズモン / 神経細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、表面プラズモン増強効果を利用した新規光マニピュレーションにより、細胞表面の分子のみを局所的に操作し、細胞内の高次操作技術を開発する。本年度は、表面プラズモン増強効果を利用した細胞内分子マニピュレーションの実現のため、プラズモニックチップ上で培養した神経細胞表面に局在する神経細胞接着分子(NCAM)を量子ドット(Q-dot)により可視化し、分子動態の集合操作について検証した。プラズモニックチップとして、カバーガラス上にピッチ 500 nmの二次元周期構造を作製し、金属層(銀)と消光抑制層(シリカ層)を成膜したものを用いた。プラズモニックチップ、またはカバーガラス上で培養したラット胎児由来海馬神経細胞の細胞表面に局在しているNCAM分子に対して免疫蛍光染色によりQ-dotを標識し、細胞表面においてNCAM分子の局在を確認した。波長1064 nmの光ピンセット用レーザーを細胞表面に集光すると、Q-dotからの二光子励起蛍光が観測された。蛍光相関分光測定により集光領域におけるQ-dot標識NCAMの分子運動特性を検証したところ、プラズモニックチップ上で培養した神経細胞ではカバーガラスで培養した細胞の結果と比較して、蛍光強度の自己相関関数の減衰時間が遅くなり、分子運動がより強く束縛されたと考えられる。これらの結果から、表面プラズモン共鳴効果に基づく光捕捉力の増大が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究実施計画に基づいて研究が遂行され、プラズモニックチップ上でラット海馬神経細胞を培養し、量子ドットで標識した神経細胞接着分子の光マニピュレーションについて検証を進めた。以上の成果から、本年度は研究計画に沿って順調に研究が進展したと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
プラズモニックチップ上で培養した神経細胞に局在する分子の光捕捉、集合操作について引き続き実験を行い、表面プラズモン共鳴効果に基づく光捕捉力の増強メカニズムについて考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究に関わる経費の削減、および効率的な使用により生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度分の研究費と合わせることにより、プラズモニックチップに光ピンセット用レーザーを照射する光学系や蛍光検出系の改良のための必要経費として使用する予定である。
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