研究実績の概要 |
フレキシブルな酵素発電デバイスを作製した。燃料溶液を含むハイドロゲルタンクを酵素電極(バイオアノードとガス拡散バイオカソード)で挟んだ構造とした。バイオアノードは、ハイドロゲルタンクに含まれるフルクトースを燃料として酸化反応を起こすのに対し、バイオカソードは、大気中の酸素を還元する反応を行う。これら酸化還元反応は、電極上に固定した酵素の触媒能を利用し、アノードでは、フルクトースデヒドロゲナーゼ(FDH)、カソードでは、ビリルビンオキシダーゼ(BOD)を用いる。酵素を固定するための電極には、柔軟なカーボン繊維(Carbon Fabric, CF)を使い、そこへカーボンナノチューブ(CNT)を修飾することで電極の比表面積を大きくし、出力性能の改善を行う。また、親水性の酵素と撥水性のCNT との馴染みを改善するため、界面活性剤を用いた表面処理技術も開発した。ハイドロゲルは、90%以上が水分である高含水性素材であるが、機械的ストレスに脆く実用性に欠く。そこで大きな変形にも耐え得るダブルネットワーク(DN)ゲルを利用することで、ヒトの皮膚などに貼ったまま利用できる柔軟なバイオ発電デバイスが実現した。これを用いて、ウェアラブルなヘルスケアデバイスの開発を進める見通しがついたといえる。発電状況をモニタするための表示機能デバイスと組み合わせることや、ゲルの乾燥を防ぐためのフレキシブルなパッケージング技術の開発を引き続き行い、製品化につなげていく。
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