研究概要 |
幹細胞を目的とする組織の細胞に分化誘導するには,胚様体と呼ばれる細胞の3次元凝集塊を形成させる必要がある.従来,胚様体形成にはハンギングドロップ法という,手作業による煩雑な操作が要求された.そのため,分化誘導や組織形成過程を網羅的に解析することは難しかった.本研究では,独自に開発した膜マイクロマシニング技術を用いて,胚様体を自動的に大量生産・個別操作できるシステムを開発することを目的としている.本年度は,インキュベータ機能を内蔵し,100個の胚様体形成用マイクロウェルを持つ,手のひらサイズのデバイスを開発した.その特長は以下の3点である. 1)100個の均一な胚様体を同時に作製可能.ウェルのサイズが等しいため,細胞懸濁液の導入により各ウェルへの播種細胞数は一定となり,均一なサイズの胚様体が形成される. 2)10本の独立した流路を有するため,同条件で培養した胚様体に最大10種の異なる試薬の導入実験を行うことが可能. 3)流路と圧力駆動ラインを1本ずつ選択することで,任意の胚様体を選択的に回収することが可能. このプロトタイプ装置を用いて,ヒトiPS細胞の胚様体を100個作製することを実証した.さらに,本装置は培養部分が透過観察可能なように設計されているため,通常の顕微鏡に本装置を設置することで,胚様体形成過程のライブイメージングにも成功した.
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