本研究の目的は,自然界の生物の持つ皮膚の色や模様の変化機構を模した,柔軟で伸縮可能な光学表示装置を構築する手法を提案することである.生物の色の変化の原理の1つである「色素胞の伸縮と収縮」を模擬した,外部刺激に応答して膨潤・収縮するマイクロハイドロゲル構造を構築し,それを超伸縮が可能なハイドロゲルシート内に内包することで,pH・温度・電場などによって光学特性が制御可能なバイオミメティック光学表示装置(光学スマートスキン)を実現する. 最終年度に当たるH26年度は、H25年度に開発したPAMPSゲルを利用した色素型ディスプレイのプロトタイプを薄型にするため、立体電極から平面電極で駆動可能とするための理論的計算、及び試作を行う。この過程を通じ、色素胞の伸縮と収縮を利用した本提案のディスプレイの設計理論の構築することができた。 また、構造色を利用した光学表示ディスプレイの研究開発を行った。シリコーン樹脂を用いてマイクロ加工により微細な流路を持つシート状の構造を構築し、その中に均一径ラテックスビーズを結晶化させてフォトニック結晶を作成することに成功した。分光光学計測により、このフォトニック結晶がフォトニックバンドギャップによる構造色を呈示することを示した。また、複数種類の光学的に異なる反射特性を持つフォトニックコロイド結晶をシート内にパターニングするチャネルカット法を開発し、2種類のフォトニックコロイド結晶を持つシリコーン樹脂シートの作製に成功した。これらの構造色の反射波長は、シートを屈折率の異なる溶液に浸すことにより制御することが可能であることを示した。
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