研究課題/領域番号 |
25600056
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鷲津 正夫 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10201162)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | マイクロ・ナノデバイス / 遺伝子導入 / マイクロアレイ / 移植・再生医療 / バイオナノテクノロジー / 細胞質移植 / 生物・生体工学 / バイオテクノロジー |
研究概要 |
本研究は,微細加工技術により製作したマイクロチップ上での遺伝子等導入技術と,チップ上での高感度測定技術の組み合わせにより,体細胞のiPS 化・iPS 細胞の分化を,細胞非侵襲的に1細胞レベルで経時追跡することにより,その過程,特に細胞周期との関連を可視化解析するとともに,履歴が明らかな細胞クローンを得ることにより,移植医療用細胞製剤として,あるいは創薬のスタンダードとしてのiPS 細胞の応用展開を加速する新手法を開発することを目的として行った。 本年度は,高収率の遺伝子導入・その後の長期培養・個々の細胞の追跡計測ができるようなオンチップエレクトロポレーションチップおよび顕微培養系の開発を行う事に加え,細胞周期依存的な蛍光色を発する細胞を用いて,細胞周期と遺伝子発現・初期化の関連について研究を行った。すなわち,山中因子とGFPプラスミドを混合し,HeLa/Fucci細胞に導入した細胞のタイムラプス観察を行った結果, S期~M期で周期を停止する細胞が,山中因子を含まない場合に比べて有意に多く観察された。また,山中/GFPプラスミド導入細胞に対してOct3/4の抗体染色を行ったところ,約70%の細胞でGFP発現とOct3/4発現が一致しているという結果が得られた。これらの実験結果より, S期~M期での細胞周期停止は山中因子の導入・発現により誘発されたものであるらしいと分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
オンチップエレクトロポレーションチップについては,実験室レベルでの量産が可能になった。顕微培養系については,数日間の細胞のトレース観察が可能になった。 細胞初期化・分化の観察に関しては,初期化に用いる4種類の山中因子が,S期~M期での細胞周期の停止をもたらすことが判明した。初期化細胞は分裂・増殖を行うはずなので,この停止は一旦の停止であるが,S期~M期においてエピジェネティックな変化をもたらすための待機であるとも考えられる。このような知見は,導入のタイミングが特定でき,1細胞で追跡できる,本手法においてのみ取得可能である。
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今後の研究の推進方策 |
第2年度は,初年度に開発した装置を用いた細胞挙動の観察に重点を置く。申請者らは,オンチップエレクトロポレーションでの山中ファクター導入により,初期化された小さい細胞塊を高頻度で観察しているが,そのうちの少数(1割以下)しか通常の大きさのコロニーに成長しない。これらをうまく培養することが可能になれば,iPS 作製の効率が飛躍的に向上することが期待できる。本研究では,遺伝子を導入した細胞を,細胞1個レベルで追跡し,たとえば1・2・3 週間後に免疫染色することにより,初期化の過程を可視化するとともに,その細胞周期との関連を解明する。 さらに,このデバイスを用いて,初期化あるいは分化のファクターとなる遺伝子等を,タイミングを制御して逐次的に細胞内に導入する。ここで用いるオリフィスシートは,核径より小さい10μm ピッチでオリフィスが稠密に配置されているため,シート上で移動するのが常である細胞に対しても2番目以降の遺伝子を導入することが期待される。さらに,初期化検出のための抗Nanog 抗体等をもエレクトロポレーションにより細胞内に導入することも試みる。通常の免疫染色は細胞を殺す必要があるが,この手法がうまくいけば,細胞を生かしたまま細胞内を染色することが可能になる。
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次年度の研究費の使用計画 |
端数であるので,次年度有効に使用する。 消耗品90円。
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