研究課題/領域番号 |
25600059
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
北村 恭子 京都大学, 白眉センター, 助教 (40635398)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | フォトニック結晶レーザ / ラゲール・ガウシアンビーム / 半導体表面加工プロセス |
研究概要 |
本研究では、単一の半導体レーザでの空間的に位相制御されたレーザビームの発生に挑戦する。フォトニック結晶(PC)レーザの有する設計自由度に着目し、出射ビームの位相制御を行う。これにより、ラゲール・ガウシアン(LG)ビームの単一・小型デバイスでの出射を目指している。 平成25年度は、PCレーザの出射面自由度の拡張 (ナノ構造の導入)、に着手し、PCレーザ出射面への3次元加工プロセスの検討を行った。通常のビームに対して、円周方向に段階的な位相遅れを与えるために、出射面にらせん状の光路差を与えるよう、通常ナノインプリントプロセスに用いられる、Hydrogen Silsesquioxane(HSQ)レジスト材料を用いて、電子ビーム露光法により、8段階の膜厚変化を与えるプロセスの検討を行った。8段階の膜厚変化を与えることに成功したものの、プロセス毎のHSQの膜厚安定性が得られず、光路差を適切に与えることのできる光学素子としての品質は低いことがわかった。そのため、現在、異なるタイプのレジストをドイツのメーカーより輸入し、そのレジスト材料を用いてのプロセスの検討を行っている。 ドイツのメーカーからの輸入に遅延が生じたため、当初平成26年度に計画していた、フォトニック結晶(PC)層への線欠陥(位相シフト)導入による、位相操作も試みた。デバイスを作製した結果、二種の位相が異なると思われるドーナッツ状の出射ビームが観測された。これは、PC格子点形状の理想的な形状から多少ずれていることによって生じているものと考えられる。引き続きプロセスの最適化等の検討を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度は、先述のようにPCレーザの出射面自由度の拡張 (ナノ構造の導入)に着手し、出射面加工によるLGビームの発生を目指した。PCレーザより発せられるガウス状の単峰の強度分布で直線偏光のビームに対して、らせん状に段階的な位相差を与えるように、出射面の加工を試みた。 当初の計画では、具体的な出射面の加工方法として、以下の2案提案した。まず、段階的なエッチングあるいは膜積層により出射面にらせん状の膜厚変化を形成し、光路差によって位相差を与える方法である。次に、金属ナノ構造を作製し、その形状変化によって位相差を与える方法である。前者については、先述のように、実現可能であることの感触を得ることはできたものの、実際に光学素子として用いるには品質が十分ではないため、新たなレジスト材料の使用を検討している。 表面加工プロセスにおいて重要となるレジスト材料の入手が遅れたため、既存の材料で検討可能な、当初平成26年度に予定していた、PCレーザの共振器設計自由度の拡張 (共振状態の維持と空間的位相制御を両立しうるPC格子構造の設計)に着手することとした。こちらについても、先述のように初期的な結果を得ることはできたものの、完全なプロセスの確立に至っていないため、全体として、本研究の達成度はやや遅れていると評価している。
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今後の研究の推進方策 |
先述のように、本研究は当初の計画よりやや遅れている。作製条件が当初予測したよりも不安定であったことが大きな要因である。新たなレジスト材料を用いることで、表面加工精度が向上するかどうかが大きな課題と考えられる。一方で、表面加工プロセスのみならず、当初の予定通り、フォトニック結晶共振器の設計による位相操作の可能性も引き続き検討を行う。定在波状態と空間的な位相変化とを同時に満たしうるような共振器構造(PC層の格子点形状・配列など)を、時間領域差分(FDTD)法による電磁界シミュレーションにより設計し、デバイス作製を行い、実験実証を目指す。 本研究の全体を通して、プロセス技術の最適化が大きな課題である。プロセス技術はノウハウに頼らざるを得ない部分もある。より簡便で安定な作製工程を確立するため、情報収集にも努める。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究の表面加工に適していると思われるレジスト材料の情報を得たものの、ドイツのメーカーであり、日本国内の輸入代理店がないなどの理由から、輸入入手することに遅延が生じた。加えて、電流バランスを部分的に制御できるような試作セラミックパッケージの設計に時間と納期がかかり、平成26年4月末の納品となったため、次年度に使用額が生じた。 昨年度設計した試作セラミックパッケージが平成26年4月末に納品・予算執行予定である。また、レジスト関連薬品の購入、研究成果報告および情報収集のための旅費等に使用する。
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