本研究では、単一の半導体レーザでの空間的に位相制御されたレーザビームの発生に挑戦する。フォトニック結晶(PC)レーザの有する設計自由度に着目し、出射ビームの位相制御を行う。これにより、ラゲール・ガウシアン(LG)ビームの単一・小型デバイスでの出射を目指している。 平成26年度は、平成25年度に引き続き、PCレーザの出射面自由度の拡張 (ナノ構造の導入)に取り組み、PCレーザ出射面への3次元加工プロセスの検討を行った。電子線リソグラフィーの3次元描画機能を用いて、作製を試みた。しかしながら、現状入手可能なHydrogen Silsesquioxane (HSQ)ネガティブレジストは、作製環境(温度・湿度・レジストの生産日からの日数)によって大きく膜厚条件が異なり、所望の構造を再現性良く作製することが困難であることが分かった。一方で、PCレーザ出射面の多段階のエッチング法を考え、様々な作製条件を試した結果、3回の精密位置合わせフォトリソグラフィーと、PCレーザ表面となるGaAs基板層の硫酸・過酸化水素水混合溶液を用いた時間制御ウェットエッチングにより、AFM像観察からほぼ理想的な8段階の位相制御板となる出射面加工ができることが分かった。 フォトニック結晶(PC)層への線欠陥(位相シフト)導入による、位相操作については、理論検討を行った結果、線欠陥設計や複合結晶設計のいずれの方法においても、面内で同時に右回りと左回りの位相変化が起こるため、あるいは出射面に対して裏面からの反射が反対周りの位相変化となるため、結果的に、位相変化が消失してしまうことが分かった。 以上の検討状況から、多数回でのフォトリソグラフィーとウェットエッチングを用いて、PCレーザ出射面となるGaAs基板を加工することが最も適切な手法と分かっており、GaAs基板上において理論上ほぼ理想的な構造の作製に成功した。
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