研究課題/領域番号 |
25600060
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
横川 隆司 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10411216)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マイクロ・ナノデバイス / 細胞・組織 / 自己組織化 / 生体機能利用 / マイクロフルイディクス / MicroTAS / MEMS |
研究概要 |
平成25年度は,フィブリンゲルを充填したマイクロチャネルを用いてヒト由来のHUVECによる自発的な毛細管網形成のモデル系を構築した.まず,長さ1 mm,幅200 um,高さ100 umのチャネルが5本,それぞれにinlet/outletを有するPDMS-ガラスデバイスを設計した.順にチャネル①~⑤とすると,中央のチャネル③は組織培養用としてフィブリンゲルを充填,②にはHUVECを導入,⑤にはフィブリンゲルに包埋したLFを導入した.その他のチャネルには培地を充填する.チャネル②と③の間,および③と④の間にはPDMSのピラーを100 um間隔で設置してゲルがチャネル③のみにとどまるよう工夫した. 製作したデバイスを利用して,HUVECによる管路形成実験をおこなった.管路形成をおこなう際には,フィブリンゲル,マトリゲル,コラーゲンゲルなど様々な候補があるため,ゲルの種類,濃度,調整方法などを最適化した.最終的にフィブリンゲルを2.5%で用事調整することでHUVECの安定した培養が可能になった.この知見を元に,チャネル③のみにフィブリンゲルを導入して硬化させ,②にはHUVEC,⑤には同条件のフィブリンゲルにLFを懸濁して導入した.最後に培地でその他のチャネルを満たして培養することで,HUVECがチャネル③のゲル内に向かって管路形成をおこないながら,進展してくる様子が確認された.ピラーの間隔,HUVECおよびLFの導入時期や播種密度などについても最適化をおこなった.最も重要な知見は,LFが無ければ管路形成がおこなわれず,また播種密度の上昇に伴って管路形成に要する時間が短縮された.このことから,Fibroblastの共培養が管路形成には欠かせないことが確認された.今後は,形成された毛細管網の評価,LFからの分泌因子の濃度分布の評価などを通して,最終的な長期間の組織培養を実現する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度においては,当初予定していた課題1が順調に推進できその成果が得られている.研究開始当初,HUVECの管路形成が遅い,あるいは全くおこなわれないと言う状況が続き,トラブルシューティングに時間を要した.しかし,結果的にゲルの濃度や調整法,細胞播種密度などを最適化することで,安定した管路形成を実現することができた.既に,形成した管路への送液,デバイス内でのLF因子の拡散状態の評価,スフェロイドの培養といった試行実験を並行して進めている.このような状況から,平成25年度に予定していた課題に加えて,次年度の課題に一部取りかかっており当初の計画以上に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
既に,平成26年度の課題に取り組み始めており,今後もこのペースで研究を推進する.試行実験で得られた知見を元に,具体的に管路内での流量(流速)からせん断力の評価,LFの液性因子の拡散状態の長期評価,スフェロイドのデバイス内への導入とその評価などを推進する.今後は,管路形成後の実験が主体になるため,細胞培養開始からデータ取得までに時間を要することに配慮しながら,計画的に研究を推進する.平成26年度以降に予定しているこれらの実験においては複数回の試行錯誤が必要であり,本研究課題の前半の研究項目が当初の計画以上に進んでいることは,今後の課題解決に大きなアドバンテージになる.
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次年度の研究費の使用計画 |
技術補佐員の採用を予定していたが,適任者を採用できず人件費を全く使用しなかったため.また,実験においてゲルの最適化に時間を要したため,予定していた培地など高価な試薬の購入が押さえられたことが理由である. 平成26年度以降,細胞培養実験が本格化すると申請経費だけでは不足することが予想される.また,研究成果を発表する機会が増えるため,学会出張などの旅費も不足することが予想される.これらの経費として使用する予定である.
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