本研究では、低アスペクト比ナノポアセンサーを応用発展させ、電気的に1個のナノ粒子や生体分子をナノ細孔中にトラップ/脱トラップさせる技術を新規に開発することを目的とした。また、この手法を駆使することで、ゲーティングナノポア構造を用いてナノ細孔中に捕捉した単一ウイルス粒子のインピーダンス計測を行い、その電気容量や電気伝導率による1粒子識別を実証することで、分子の体積以外の情報を得ることができる新しいナノポアセンシング技術を創成することを目指した。 低アスペクト比構造を有するナノポアを用いて、当該ナノポアの直径より小さい粒径を有するポリスチレン粒子のトラップ現象を、ポアを通るイオン電流計測を通して調べた。その結果、ポアに単一粒子が電気泳動的に補足されたことを示唆するイオン電流の減少が観測された。また、このナノポアトラップ法を応用し、異なる表面修飾が施されたポリスチレン粒子(粒径は同じ)について単一粒子トラップ測定を行い、その時に現れるイオン電流の減少量を指標として、ポリスチレン粒子の表面電荷密度の違いを識別することが可能であることを明らかにした。さらに、ナノポアにナノ電極対を組み込んだデバイスを作製し、当該ナノ電極間に生じるイオン電流を測定したところ、ナノポアトラップ法により単一ナノ粒子が捕捉されると同時に、ナノ電極間の電流が過渡応答を示した。これは、トラップされたナノ粒子によって、ナノ電極表面近傍に形成された電気二重層の状態が変化したことに起因する現象であると考えられる。 以上のように、ナノポアトラップ法を基盤とした検体の体積以外の情報を得ることができる新しいナノポアセンシング技術を創成することに成功した。
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