自律的に泳動できる粒子は、標的部位に目的物質を泳動して届けることに応用できるので、DDSの担体等への応用が期待できる。自律泳動する微粒子としては、異なる金属をJANUS形状に張り合わせた微粒子が過酸化水素を駆動源として泳動することが知られている。一方で生体にある基質を駆動エネルギーとして、このような泳動を駆動させることができるならば、体内で活躍できる材料として期待できる。今回、樟脳船が水面を自律的に泳動できることをヒントに、酵母から発酵によって作られる生産物を樟脳のように利用できれば、糖を駆動エネルギーとして泳動する微粒子が可能であると着想した。そこで本研究では、この生産物を発酵によって生産する菌を含んだ粒子が、自ら生成する生産物によって自走が可能かどうかを検討するために、発泡スチロール粒子に菌を付着させシステムにより、走化性粒子の調製および走化性の検証を行った。 軌跡からは大きい運動の挙動の違いは確認できなかった。反応物濃度が低い際と高い際にはほとんど差異がみられなかった。角度変化の自己相関プロットからは、反応物濃度及の際、相関係数は生産物濃度が高くなるにつれ大きくなることが分かった。結果、反応物濃度の増加に応じて若干の移動速度増加と指向性の向上が確認できた。樟脳舟のような強い指向性と活発な泳動を示さなかった利用として、菌の発酵速度が小さいため、泳動に十分な表面張力差を生産できていないことが考えられる。また。ブラウン運動に伴う擾乱により方向が乱されたことは水槽温度の違いより明らかになった。
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