研究課題/領域番号 |
25600064
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
三木 則尚 慶應義塾大学, 理工学部, 准教授 (70383982)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | MEMS / 医療応用 / 成膜 / 表面改質 / ナノポーラス膜 / 透析 |
研究概要 |
血液透析治療を必要とする患者は週3回、各回4時間の治療のため通院せねばならずQoLが著しく損なわれている。本患者が携帯、究極的にはインプラントできる小型の透析装置が実現されれば、患者QoLを格段に改善できると考えられるが、この装置は長期間の継続使用が求められるため、血液成分の透析膜への付着による透析性能の低下が問題となる。そこで、平成25年度は、ナノポーラスなPES膜上に、ナノポアを塞がない形で薄膜を成膜し、透析膜表面特性の制御手法の確立を目指した。薄膜として生体適合性が高いパリレンおよびフッ素添加ダイヤモンドカーボン(F-DLC)を用い、成膜プロセスと、表面処理ならびに透析性能の評価を行った。 パリレンならびにF-DLCが成膜時にPESのナノポアを塞がないように、ナノポーラス薄膜を成膜した。ナノポーラス薄膜は、パリレンでは成膜用の原料の量、F-DLCでは成膜時間を極めて小さくすることにより実現した。一方で十分な表面改質を実現するために、接触角の評価を行い、最適な成膜プロセスを導出した。 導出したプロセスにより成膜された膜について、マイクロ流体回路を用いることにより低分子イオンの透過性能を評価した。成膜されてないPES膜の透過性能に比べて劣るものの、低分子イオンの透過を確認した。さらに血液成分の付着について検討を行うため、血液潅流回路を構成しウシ全血を用いて実験を行った。それにより血液成分付着による透過性能の低下を、パリレンならびにF-DLC成膜により実現できることが明らかになった。一方で、PES膜のみの場合は透過性能が低下するものの、ある値に落ち着いていくことが明らかになった。安定した生体保護膜が形成されている可能性があり、平成26年度には、より長期の実験ならびにin vivo実験により評価していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の目的であったナノポーラス膜による表面改質プロセスを確立するとともに、平成26年度の課題であった潅流回路を用いた血液成分付着の評価を前倒しで行った。これにより、表面改質プロセスの有効性を示すことができ、パリレン膜による表面改質、F-DLCによる表面改質それぞれについて国際論文誌に発表することができた。また、研究連携者の菅野らが行う、小型人工透析システムのラット腎不全モデルを用いたin vivo系での透析実験への開発した小型透析装置の接続方法や、実験プロトコルに関する検討をすでに進めている。以上のことから、当初の予定を上回るペースで研究が遂行できていると考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、まず潅流回路を用いたin vitro系実験により、PES膜上に形成された生体保護膜の評価を行う。安定して形成されている場合はこれを積極的に利用したいが、例えば生体保護膜の生成が急激に進展し、透析装置内の流路を閉塞するようであれば、避けなければならない。また透析装置をヒトに応用するときには、流体素子の積層化が不可欠である。その際に血液、濾液のリークがないか、長期使用に耐えるパッケージングを開発する。 研究連携者の菅野と共に、ラット腎不全モデルを用いたin vivo系での透析実験を行い、膜の表面改質の効果、透析性能を評価し、60日の長期使用を実現する。
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