血液透析治療を必要とする患者は週3回、各回4時間の治療が必要であり、QoLが著しく損なわれている。患者が携帯、もしくは患者にインプラントできる人工透析装置が開発されることで、通院による生活の制限が解除されるとともに、常に透析治療が行えるために、緩徐な血液浄化による身体負担の軽減が可能となる。一方で、長時間使用により、血液成分の付着による透析性能の低下を防がなくてはならない。 本研究では、まず生体適合性の高いパリレン薄膜ならびにフッ素添加ダイヤモンドライクカーボン(F-DLC)膜による透析膜(ポリエーテルスルホン、PES)の表面処理により、生体物質付着の防止を試みた。特に、PESのナノサイズの孔を塞がないように、ナノポーラスなパリレン膜、F-DLC膜の成膜方法を開発した。表面処理したPES膜に対して、ウシ全血を用い長時間(28日)透析実験を行い、その効果を評価した。その結果、表面処理をしていないPES膜は、使用後7日間で著しく透析性能が低下したが、表面処理により透析性能を28日間一定に保つことができた。しかしながら、PES膜のみでも、ある程度の透析性能を維持し続けることが明らかになった。これはPES膜表面に形成された生体膜も透析性能を有するためであるといえる。 そこで、ケージ状部材をラットに埋め込み、5週間後摘出したケージに形成されている生体膜について低分子イオン透過性実験を行った。その結果、生体膜も透過性、すなわち透析性能を有していることが明らかになった。過剰な生体膜が形成されなければ、透析に積極的に利用できる可能性を示した。また、in vivo実験のプロトコルを確立し、実験を行った。特に透析液を用いない血液濾過モードで実験を行い、5時間の実験において、デバイス無しでは2倍に増加するクレアチニンの増加を7%程度に抑えることに成功するなど、提案するシステムの有効性を示した。
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