研究課題/領域番号 |
25600072
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
貴田 徳明 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (30587069)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | テラヘルツ電磁波 / 有機強誘電体 / 強誘電ドメイン |
研究概要 |
本研究で対象とする物質は、室温で強誘電性を示す数々の有機分子性結晶である。有機分子性結晶は、電荷の偏り、水素結合、分子間振動などに起因する様々な発現機構によって強誘電性を示すことが最近明らかとなってきた。本研究では、有機分子性強誘電体に特徴的な上記の性質を利用することで、強誘電ドメインの「光による制御」を目指す。超高速に強誘電ドメインを制御するためには、従来の電気分極や反射・透過スペクトルなどの光応答を測定することだけでは不十分で、強誘電ドメインを実空間で観察し、その強誘電ドメイン構造が光照射によって変化するダイナミクスを明らかにすることが必要不可欠である。本研究では、室温で強誘電性を示すクロコン酸や5,5’-ジメチル-2,2’-ビピリジン、PhMDA、二次元有機導体であるα-(BEDT-TTF)2I3において、強誘電相においてフェムト秒レーザー照射によってテラヘルツ電磁波が発生すること、さらに、放射したテラヘルツ電磁波をプローブすることで、強誘電ドメインを簡便に可視化できることを初めて見出した。特に、5,5’-ジメチル-2,2’-ビピリジンにおいては、テラヘルツ帯の吸収スペクトルの異方性を利用することで、奥行き方向の強誘電ドメインの可視化に成功した。さらに、低温ならびに電場印加下においてイメージング測定が可能な実験系を構築した。この測定系を用いて、α-(BEDT-TTF)2I3の電荷秩序相において非線形伝導下における伝導パスの可視化に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
室温で強誘電性を示すクロコン酸、5,5’-ジメチル-2,2’-ビピリジン、PhMDAから典型的なテラヘルツ放射素子であるZnTeに匹敵する高効率なテラヘルツ電磁波が発生することを初めて見出した。さらに、放射したテラヘルツ電磁波を利用すると、電気分極の方向を含めて簡便に強誘電ドメインを可視化できるなどの成果も得られた。特に、5,5’-ジメチル-2,2’-ビピリジンにおいては、3次元的に強誘電ドメインを可視化する手法を開発した。さらに、α-(BEDT-TTF)2I3において非線形伝導下における金属伝導パスの可視化にも成功している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度で見出したテラヘルツ電磁波発生を利用した新しい強誘電ドメイン観察手法を使い、外場として電場や光を利用し、強誘電ドメインの反転現象に関する研究を進める。さらに、他の物質系においてもテラヘルツ電磁波発生現象を探索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に実験を計画していたが、事前に予想し得なかったフェムト秒レーザーの納入が遅れ、実験で使用する予定であった光学素子、チョッパーを購入できなかった。 平成26年3月にフェムト秒レーザーの改良が終了し、平成26年度に当初予定の光学素子、チョッパーを購入する予定である。
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