研究課題
最近、有機分子性結晶においても、無機強誘電体の典型例であるBaTiO3に匹敵する電気分極を生じる多数の物質群が、我が国で開発・発見された。その大きな特徴は、動作温度が室温を超えていることである。本研究では、有機強誘電体における強誘電ドメインの「光による制御」に挑戦し、室温においてレーザー照射による強誘電ドメインの反転現象を見出した。さらに、クロコン酸やPhMDAなどの有機強誘電体にフェムト秒レーザーを照射することで、高効率なテラヘルツ電磁波放射現象の観測に初めて成功した。テラヘルツ電磁波の強度や効率も、典型的なテラヘルツ放射素子であるZnTeに匹敵することを見出したことは大きな成果である。強誘電特性や光学特性を超高速に制御するためには、そのドメイン構造が外場によって変化するダイナミクスを明らかにすることが重要な課題である。このような現状の中、放射したテラヘルツ電磁波振幅の場所依存性を測定したところ、光学顕微鏡像では判別できない+方向の電気分極、-方向の電気分極やドメイン壁が簡便に可視化できることがわかった。さらに、深さ方向の分解能を得るため、テラヘルツ帯の吸収異方性を利用する新たなイメージング手法を開発した。その結果、結晶内のドメイン壁の挙動を3次元的に可視化できるなどの成果が得られた。さらに、有機強誘電体においてテラヘルツ電磁波放射現象の探索を行ったところ、イミダゾール系では、瞬時誘導ラマン過程によって狭帯域のテラヘルツ電磁波が発生することを初めて見出した。分子結合の違いによって、定性的に異なった非線形光学過程が現れることは、予期していなかった発見である。このように、有機強誘電体からのテラヘルツ電磁波発生に初めて成功し、それを利用した新しいドメイン可視化手法を開発したことによって、強誘電ドメインの光制御に関して、重要な基盤が築けたと考えている。
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