本研究では、磁石の薄膜に歪を加え、磁力をスイッチできないか?ということを目的としたものである。磁石と歪みの関係は磁歪効果として知られ、磁界を加えることで磁性体の歪みが変化することを指す。逆に故意に歪みを加えると磁化の向き易い方向が変わることがあるという結果も報告されてきた。本研究の目的は、一般的な磁歪効果の枠を超え、「強磁性相転移」と歪みの関係に焦点を当て、主にCoやFe・Niなどの身近な3d遷移金属強磁性体超薄膜のキュリー温度の歪み応答を調べることにある。故意に歪を加えて磁気特性を室温で制御できれば、磁石の特性を使いたいときに自由に引き出す技術の芽を引き出し、確立できるものと考えている。 限られた期間(1年)であったたため、とにかく早く成果を形にすることに注力した。得られた成果は将来展開に大きな期待をもたせる有意義なものであった。しかし、特許性を見極めるためにもう少し時間を要すると慎重に判断し、クローズドの会議以外の公の場で成果を公表することは控えた。可能な限り早く公開することを予定している。以下、公開しても差し支え無い範囲内で、概要を述べる。 特許出願や公開のタイミング以外は、概ね申請書の研究実施計画通りに研究を進めることができた。まず、意図した温度下・外部磁界下で試料に歪を加えるための実験システムを設計・自作し、迅速に実験が行えるように準備した。同システムを用い、メンブレン基板上に成膜したCoやNiの超薄膜に歪を加えて実験を行った。歪量の定量的評価や、磁歪の逆効果との切り分けが困難であったが、磁気特性の変化が確認された。次に、様々な基板上に強磁性金属薄膜を製膜し、それを直接曲げることで実験を行った。磁気特性変化が確認され、曲げ量との定量的な関係性を明らかにすることが可能となった。いくつかの問題点を解決することに引き続き注力し、特許化及び論文などでの成果の公開を目指す。
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