研究課題/領域番号 |
25600076
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
白石 誠司 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30397682)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | トポロジカル絶縁体 / ヘリカルカレント / 逆スピンホール効果 |
研究概要 |
従来のトポロジカル絶縁体は、大気中でフェルミ準位がバルク状態に入り込むものがほとんどであり、ヘリカルカレントの観測には不向きであった。そこで大気中でも安定でフェルミ準位がバルク絶縁状態にあることが期待できるBiSbSeTeを対象材料として選定し実験を薦めた。 今年度は一気に逆スピンホール効果を用いるのではなく、BiSrSeTeが3次元トポロジカル絶縁体であることを利用したヘリカルカレント中のスピンの電気化学ポテンシャルを電気的に計測し、それによるヘリカルカレントの輸送効率を計算することで逆スピンホール効果を用いた観測に必要な効率を求めることを目指した。実験手法は一般に非局所4端子法と呼ばれる手法を改良した改良型3端子法であり、研究者が長年シリコンスピンバルブにおける純スピン流観測によって構築してきた信頼性ある方法である。 実験結果の詳細については近日中に論文投稿予定のためここに詳細を記述することをしないが、低温領域において伝導キャリアに対するヘリカルカレントの寄与が大きい場合に、いわゆるスピンダイオード効果と呼ばれるspin-momentum lockingに起因する磁気抵抗を観測することができた。類似の研究は米国海軍研究所グループが2月に発表しているが、フェルミ準位がバルクバンドにかかっているBiSeでの観測であり、その信頼性には議論の余地があるため、本研究による成果は信頼性ある世界に先駆けた成功である可能性がある。来年度はこの電気的手法に加えて、ヘリカルカレントの観測に逆スピンホール効果を用いてさらにこの現象を追求していきつつ、結果の信頼性やヘリカルカレントの実時間観測について先駆的業績を挙げていくことを目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3次元トポロジカル絶縁体におけるヘリカルカレントの電気的観測に成功しており、他の研究機関による報告の信頼性に未だ議論の余地があることから、世界的に見ても第一線でこの分野の研究を牽引できる地位まで研究を持ってくることができている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度はこの電気的手法に加えて、ヘリカルカレントの観測に逆スピンホール効果を用いてさらにこの現象を追求していきつつ、結果の信頼性やヘリカルカレントの実時間観測について先駆的業績を挙げていくことを目指す。同時に先に成功したとする海軍研究所の結果の信頼性に関しても対照実験から明らかにし、この領域における世界的研究を推進していくことを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年10月に白石が大阪大学から京都大学に異動したが、それに伴い研究室の異動などで実験装置の停止と移設があったため、正味の実験遂行期間が大きく減ったため。 初年度に実施しきれなかった実験の遂行に使用する。
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