研究課題/領域番号 |
25600079
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
澤野 憲太郎 東京都市大学, 工学部, 准教授 (90409376)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歪みゲルマニウム / 単正孔デバイス |
研究概要 |
本研究で目標としている、歪みゲルマニウム(Ge)量子ドット単正孔デバイスの動作実証に向けて、本年度は、Si基板上の歪みGeチャネル2次元正孔ガス(2DHG)の結晶成長技術の開発を中心的に進めた。特に、単正孔デバイスの実現のために、2DHGの正孔濃度を低くすることが重要課題である。一般に、良質なGeチャネルを形成するためには、緩和SiGeバッファー層をSi基板上に形成することが必須であるが、ノンドーピングであってもp型となり、低正孔濃度化のために、まずSiGeバッファー層の高品質化と薄膜化を進めた。一般的な傾斜組成法では、膜厚の薄膜化は不可能であるので、今回2段階成長法という、低温成長と高温成長を組み合せる手法を、様々なGe組成、層構造で試みた。特に特徴的な方法として、Si基板上に直接Geバッファーを成長させ、そこからGe組成を下げてSiGe0.8バッファーを形成する方法において、Ge膜の大幅な低転位化が達成され、正孔濃度としてこれまで報告されているものを大きく下回る値を得ることができた。これは、バッファー層の結晶性の高さを示しており、この上へ歪みGeチャネルを形成することで、低密度の2DHGの実現が期待できる。 また、量子ドット形成において最重要となるのが、トップゲートによるキャリア制御技術であり、良質なゲート構造の開発を進めた。絶縁膜材料としては、原子層堆積技術(ALD)を利用した、Al2O3膜の形成を試みた。まずは歪みGe上へ直接堆積し、良質な膜が形成され、良好なCV特性を得ることができた。さらに膜厚依存性等を系統的に調べ、リーク電流も抑制可能であることが分かった。今後この絶縁膜を利用した量子ドット構造への適用が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画の通り、結晶成長によるSiGeヘテロ構造、バッファー層の高品質化と、ゲート構造の開発は、両者平行して順調に進んでいる。2次元正孔ガス形成を試みたところ、重要な正孔の低濃度化はバッファー層膜厚低減、高品質化であること明らかとなり、まずバッファー層の開発に注力しており、2次元正孔ガスの最適化はその後に進めることとした。バッファー層形成技術については当初計画以上に進んでおり、問題はないと考える。ゲート構造についても、ALDの利用が可能となったことから、その条件出しを進め、Siキャップ構造に先んじて、Geへの直接成膜を進めている。良質な膜ができており、今後のデバイス構造に問題なく利用できるところまで進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
良質な薄膜SiGeバッファー層の形成が可能となりつつあるので、歪みGe2次元正孔ガスの形成に移り、その低温での特性を調べ、さらに低正孔密度化、高移動度化を進めていく。特に、変調ドーピングに用いるドープ層の不純物濃度、チャネルとドープ層のスペーサー膜厚の最適化を、キャリアの散乱メカニズムの究明と同時に進める。 また、歪みGe構造上の高誘電率ゲート絶縁膜の開発として、歪みGeであることを生かした、Siキャップ層の挿入効果を調べる。ここまで利用しているGe上Al2O3膜構造において、Siキャップを挿入することで、特性のさらなる改善を目指していく。また、絶縁膜材料としては、Al2O3の他に、さらに高い誘電率を持つ材料として期待されている、希土類酸化物(Hf系やLa系)を探索し、ALDによる成膜を試み、各材料の特性を明らかにしながら、最適な材料を選定していく。そして、良質なゲート積層構造を確立し、トップゲーティングにより、2DHGを面内局所的に空乏化させる技術を確立していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
作製した試料の外注分析依頼の費用を予定していたが、外注に出す前に、別方法(学内で評価可能)での構造評価、最適化に時間がかかり、外注を行わなかったため。 最適化された試料について、TEM分析およびSIMS分析等に利用する予定。
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