結晶育成システムに電流を注入して周期双晶構造を作製し、同構造を非線形光学用の擬似位相整合構造として機能させることにより深紫外光が最大変換効率で得られる四ホウ酸リチウム(LB4)単結晶を作製することを試みた。作製の原理を示す。双晶面には(100)とこれに垂直な(010)の2種あるが、双晶面の発達方位は結晶成長界面の方位との角度で決定される。融液からの結晶育成において成長界面に平行に融液にパルス電流を印加すると界面近傍融液に局所的な組成分布が発生し界面形状とその方位が変化する。このメカニズムにより双晶面方位を任意のパルス周期で操作し周期双晶構造を作製する。すなわち、従来は欠陥として回避してきた双晶を積極的に導入し、周期双晶構造を作製し擬似位相整合構造として機能させることによりホウ酸塩結晶による深紫外光発生全固体レーザーの作製が可能となる。 まず、(010)双晶を成長方向に含む板状結晶の作製を行った。結晶成長方位と平行な(010)双晶を含有する種子結晶を用い、マイクロ引き下げ法により5×2mm板状のLB4結晶を[100]方位に成長させた。電流印加により融液組成を変えるため、初期融液組成は一致溶融組成からB2O3側にずれた組成を用いた。結晶化したLB4は、常に化学量論組成を持つ。次に、界面融液へ直流電流を注入し、ルツボ壁融液にLi2O成分の偏りを持たせ、この部分の成長速度を増大させて界面形状を制御し、(010)双晶と(100)双晶の同時成長を試みた。最初の電流注入では、(100)双晶の発生が見られたが、電流注入のON-OFFの繰り返しでは、Liイオンの移動速度変化と界面形状変化のバランスをうまくとることができず、現時点では周期双晶は形成できていない。今後は、この問題を解決し、LB4の周期双晶構造を作製する。
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