本研究は太陽電池用シリコン基板のコストを低減させるため、シリコン融液表面から直接薄板状結晶を成長させる手法を提案した。従来の基板作製プロセスでは大型インゴットを切断、スライスすることにより薄板状基板を作製している。しかし、このスライス工程において基板と同程度の切削屑が発生し歩留まりが低下してしまう。そこで本研究は、シリコン融液直上に冷却プレートを配置し、放射冷却を制御することにより融液表面で薄板状結晶を成長させることを目的とした。目的とする基板を得るためには、融液表面で薄く均一で正方形の結晶が必要であり、これには精密な炉内温度のマネジメントが不可欠である。そこで、本研究で独自に開発した結晶成長炉に対して熱輸送計算により温度分布のシミュレーションを実施した。その結果、シリコン融液の上面に設置した冷却プレートの位置を変えることにより、融液内部の温度分布が大きく変化することを確認した。また、具体的に融液表面の中心部の温度を5℃の範囲で制御できることを計算により示した。これらの知見を利用することで、結晶品質の向上や成長した結晶の外形制御が可能と考える。次に、上記の結晶育成炉を用い成長実験を行った。その結果、種結晶と同じ方位の薄板状結晶が作製できることを確認した。これらの実験は本手法の有用性を十分に示した結果と考える。また、本研究の知見を用いることでより高品質な薄板状シリコン結晶を成長できる可能性も示すことが出来た。
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