本研究目的である1粒のナノ結晶の構造解析を行うためには、ナノ結晶を回転軸の上に一致させるための高精度な2軸xy並進を備えたゴニオメーターの作成が鍵となる。初年度は予算の関係で1軸並進機構しか備えられなかったが、本年度は並進機構を追加購入して2軸並進機構を組み込んで、当初の目的である2軸xy並進を備えたゴニオメーターを作成し、その動作テストを行った。初年度に作成した1軸のものに比べて、回転機構もピエゾ駆動方式にして高精度化を行い、超高真空下で精度良くナノ結晶を軸に置いたまま回転できるようにした。また、回転機構のベアリングもスラストベアリングなどを使用することで回転軸のガタつきをできるだけ抑える構造にした。今後、このゴニオメーターを超高真空走査電子顕微鏡に組み込んで、種々のナノ結晶の電子回折実験を行う予定である。 本研究では、ゴニオメーターの開発・作成と並行して、測定対象とすべき興味深いナノ結晶の調査も行った。例えば、大きな結晶が作成できないような有機ナノ結晶、光や温度によって構造相転移が引き起こされる有機・無機ナノ結晶、隕石のような物質そのものが限られており大きな結晶が得られないもの、そして核燃料物質などのように規制されて本当に少量しか取り扱えないものなどの構造解析に利用できることがわかった。また、分子線エピタキシー中に不純物や欠陥により期せずして基盤上に形成されたナノ結晶の構造解析も、材料物性研究には重要である。今後、どのようなナノ結晶を対象にしていくか具体的に検討する予定である。
|