研究課題
中間バンド型太陽電池は、量子ドットの積層構造などで形成された中間バンドを、「はしご」のように順番に電子を励起させることで長波長の光を有効に活用し、高効率化を目指すものである。この構造では「励起された電子が、どのバンドを、どのようなエネルギーを持って電極まで伝導させるか」を制御する必要がある。本研究では、まさに電流の担い手である太陽光で伝導帯に励起した伝導電子を試料表面から真空中に取り出し分光する。それを実現するのが、NEA(負の電子親和力)表面からの電子放出技術である。本計画では、実際に超格子による中間バンド型太陽電池構造にNEA表面を施し、中間バンドを伝導してきた電子の角度分解光電子分光を行う。これにより、実際に太陽電池内に形成された中間バンド構造を明らかにし、電子が確かにその中間バンドを伝導してきたことを明確に証明することを目的とした。最初に、現有の角度分解光電子分光(ARPES)装置にNEA表面形成チャンバーとサンプルへの可視光照射のためのチタンサファイアレーザーを取り付け、サンプルへ適切に可視光を照射する系の構築を行った。次に、実際に標準サンプルとして、p-GaAsバルク試料 (バンドギャップ1.42 eV) にν=1.71 eVの光を照射し、GaAsの伝導帯評価を行った。その結果、下に凸の放物線状の分散が観察され、この形状はGaAsの伝導帯のΓ点付近の分散形状とよく一致した。さらに、同様の測定をGaAsP/INGaAs超格子についても行った。その結果、第一、および第二ミニバンドと考えられる二つの分散を得ることに成功した。このことは、ミニバンドを伝導電子が伝導し真空中に放出したことを直接的に証明する結果である。
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