研究課題/領域番号 |
25600091
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
末光 眞希 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (00134057)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 3C-SiC / ヘテロエピタキシ / CMOS / 断面TEM観察 / 面欠陥 / CVD |
研究実績の概要 |
MOSデバイスはこれまでSi(100)基板上に構築されてきた。それはこの面方位においてSi/SiO2の界面準位が最小で、その結果、電子移動度が最大だからである。その一方、Si(100)面の正孔移動度は電子移動度の約30%ときわめて低く、このためCMOSではNMOSとPMOSの動作速度を合わせるべく、前者をわざと大きく作っており、そのことがCMOSデバイスの更なるスケーリングを阻む一因となっていた。本研究は、申請者らが構築してきた結晶成長技術の最新の成果を組み合わせ、正孔移動度がSi(100)面に比べて2倍以上も高いSi(110)基板上に3C-SiC(111)極薄膜を介してSi(111)結晶をエピタキシャル成長させるという、これまでにない発想の革新的CMOS技術を提案し、原理検証を行うことを目的として研究を行っている。 二年度である2014年度は、SiC結晶上のSiエピタキシャル成長プロセスを確立すべく、工業的製法であるLPCVD装置を用いて予備実験を実施した。シランを原料としてSiならびにSiC基板上へのSiエピタキシャル成長を試みたところ、Si、SiC基板上ともSiのエピタキシャル成長が可能であることがX線ロッキングカーブにより確認された。またSi(110)基板上に3C-SiC(111)配向薄膜が成長する初期過程を高速電子線回折(RHEED)によって「その場」観察することに初めて成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、(Ⅰ)Si(110)基板上3C-SiC(111)回転エピ成長を発生させ、(Ⅱ)この3C-SiC(111)薄膜上にSi(111)薄膜を形成させるものである。本年はこのうち(Ⅰ)に関し、成長面の結晶方位を高速電子線回折(RHEED)によって「その場」観察することに初めて成功し、この結晶方位回転現象が、SiC成長時ではなく、Si基板上バッファ層(炭化層)形成時に生じることを明らかにした。これは極めて重要な知見である。また(Ⅱ)に関しては、将来の産業化を見据え、実際の半導体プロセスで用いられると同じLPCVD装置を用いてSiC結晶上のSi薄膜成長を試み、エピタキシャルSi薄膜の成長に成功することができた。これは当該研究が提案する結晶方位回転技術の実用化に大きく資するものである。 以上から平成26年度はおおむね順調な進展であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の固相炭化法及びSiC/Si界面平坦化技術の開発、二年度の結晶方位回転過程「その場」観察技術及びSiC結晶上Si薄膜成長技術の開発、を組み合わせ、高品質結晶方位回転Si薄膜の開発を行う。また電気特性評価実験を行い、提案技術の将来性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
回転エピ成長機構を解明する成長カイネティクス評価に関し、当初はSiC薄膜を成長させた後にこれを電子顕微鏡(TEM)評価することを予定していた。しかし既存のRHEED評価装置が、同目的に使用できることが判明し、これにより、当初予定していた薄膜TEM評価を次年度に先送りしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
薄膜TEM評価費用に充当する。
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