研究課題
挑戦的萌芽研究
本研究では高感度の表面磁気光学カー効果測定装置を開発し、光学的手法を用いて Rashba 分裂した表面状態に よるスピン伝導測定を行うことを目的にする。近年スピン軌道相互作用を利用して電場でスピンを制御し、電荷 の移動を伴わないスピンの流れである”スピン流”の研究が半導体界面やバルクで盛んに行われている。 一方 表面系でも Rashba 効果によりスピン分裂したバンド構造を持つ状態が数多く見つかり、申請者はこれまで電気 伝導測定手法によりこのようなスピン流の検出を試みてきた。そこで本研究ではこれを発展させ、より表面敏感 性の高い光学的手法を用いた表面状態スピン流の研究の開拓を試みる。初年度である平成25年度は円偏光の光をRashba表面系に照射したときに期待されるスピンガルバーニ効果の検出を目指した。試料はBiをAg(111)に1/3原子層蒸着して形成される、Ag(111)r3xr3-Bi表面であり、これまで報告されている系の中で最大級の表面Rashba効果を示すことが分かっている。4/λ板を回転して直線偏光の光の偏光を変調して試料両端に蓄積される電圧を測定した結果、回転角と発生電位の間に明確な対応関係が見られた。また磁場を面内・面直に印加したが、印加磁場と発生電位についても対応が見られた。今後さらにデータを蓄積し、解析を行うことで実際にRashba効果に由来するシグナルであるかを検証していく。これとは別にスピン偏極ヘリウムイオン散乱を用いたRashba表面系(Bi(111)表面)における電流誘起スピン偏極の測定も行った。試料ホルダーを回転して入射ヘリウムイオンのスピンと試料に誘起されるスピン偏極との相対角度を振ったところ、系統的に変化するデータと変化しないデータが得られた。現在この解釈を議論中である。
2: おおむね順調に進展している
当初は表面磁気光学カー効果測定を用いて実際にRashba表面の電流誘起のスピン偏極を測定する予定だったが、装置改良に時間がかかると判断したので2年目以降に予定していたスピンガルバーニ効果実験を先に行った。測定データは実際に得られており、後は解析するのみであることから、このように判断した。
まず測定したスピンガルバーニ効果のデータ解析を行っていく。さらに当初の計画通り、装置の改良を行うことでRashba表面に電流を流した際に誘起されるスピン偏極を測定していく。平行してスピン偏極イオン散乱を用いても同様な測定を行っていきたい。
当初研究計画を若干変更し、二年目以降行う実験を先に行ったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額と本来支給されるべき額を合わせて装置改良を行い、当初計画の一年目に行うべき実験を遂行していく。
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