研究課題
研究最終年度の平成27年度は前年度に引き続き、超高真空下でラシュバ分裂したバンド構造を示す表面超構造に円偏光したレーザー光を照射し、左右円偏光の違いで試料の両端に生じる起電力が変化するかを系統的に調べた。使用した試料はシリコン基板上に作成したビスマス(Bi)薄膜とシリコン基板上の銀(Ag)薄膜上にBi原子を1/3原子層吸着した系(Bi/Ag薄膜)である。前年度から問題点はラシュバ効果によってスピン分裂していないバンド構造を持つ試料(例えばSi(111)-7x7)でも起電力に左右円偏光で違いが出ることであったが、この問題はレーザーの波長や入射角度依存性などを詳細に調べることで本来見たいシグナルとは別の起源で発生していることが明らかになった。Bi薄膜およびBi/Ag薄膜では色々な条件での測定の結果、ラシュバ効果由来のシグナルと考えても矛盾しないデータが得られていたが、他の起源である可能性を完全に排除することができなかった。確信を持ってスピン分裂したバンド構造由来の円二色性を観測したと言うには光学励起が起きている非占有状態の情報が必要であり、現在実験では明らかにされていないため第一原理計算に頼る必要があるが、本年度中にそこまでは至らなかった。今後理論家と協力しバンド構造および光学遷移課程を選択則を考えて計算することで本研究で目指した磁気二色性のシグナルが確かに検出できたか検証する予定である。
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