本研究課題では、カンチレバーを局所的に加熱できるレーザ照射系および試料加熱冷却機構を備えた原子間力顕微鏡(AFM)をベースに、局所熱電性能を評価できる走査ゼーベック顕微鏡(SSM)法を開発することを目的とした。SSMを用いれば、有機/無機を問わず様々な熱電材料を対象にナノスケール熱電性能を評価することが可能であり、熱電性能と組成・構造との相関を明らかにできる。本研究では有機薄膜材料を対象とし、温度変化による電位変化とナノスケールの組成・構造との対応を評価した。 まず、現有のAFM装置における強度変調レーザ照射系の集光系を最適化し、漏れ光による試料表面の温度上昇を避け、探針直下のみを効率よく加熱できるように改造し、探針部の温度のみを選択的に上昇させることができることを確認した。一方、カンチレバーに直接通電加熱した方がより効率よく探針直下を加熱することができることも判明した。これらの探針加熱方法を用いて、試料表面上の各点で有機薄膜の局所電位評価を行い、局所的な熱電性能を評価できることを確認した。 一方、現有の周波数変調方式(FM)AFM装置において、有機薄膜トランジスタ試料を対象に、ケルビンプローブフォース顕微鏡(KPFM)により有機薄膜上の電位分布評価を行い、その温度依存性(-120℃~50℃)を調べ、ここから局所活性化エネルギーを算出、2次元マッピングすることに成功した。
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