時間分解静電気力顕微鏡の実現を目指して装置開発を行い、試料として有機太陽電池に焦点を絞り研究を進めてきた。まず、良く確立した有機太陽電池としてMDMO-PPV:PCBM薄膜をPEDOT:PSS/ITO基板上にスピンコートにより作製し、真空中で暗条件下において、周波数変調ケルビンフォース顕微鏡(FM-KFM)および周波数変調静電気力顕微鏡測定(FM-EFM)を行った。MDMO-PPVとPCBMはマイクログレインに分離して、ブレンド状になることが知られている。FM-KFMのコントラストはトポグラフと良い一致を示したが、FM-EFMのコントラストはトポグラフと著しく異なり、グレインバウンダリーで特徴的なコントラストを示した。FM-EFM画像から、ドナーとアクセプターの境界で、大きな分極が存在することが示唆された。また、トポグラフではひとつに見えるグレインの内部にFM-EFMではいくつかの境界が存在することもわかった。 次に光照射による電荷のトラップと長寿命電荷の再結合ダイナミクスを明らかにするため、試料背面から光照射が可能な試料ホルダを作製した。光照射による周波数シフト変位の観測に成功したが、探針のコンディションによる影響が極めて大きく、安定な画像を得るには至っていない。しかし、装置的な枠組みは完成し、標準試料としての有機太陽電池薄膜の調製もほぼ確立できたので、引き続き、実験条件の最適化を続け、当初目的を達成したい。
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