研究課題/領域番号 |
25600103
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
戸川 欣彦 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (00415241)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 電磁場解析 / 小角電子線散乱法 / 磁性人工格子 / スピントロニクス材料 / 電磁場イメージング法 |
研究概要 |
“物質中の電磁場を直接観察すること”は物質科学やエレクトロニクス研究において重要な意義をもつ。本研究では“小角電子線散乱法”を用いた電磁場定量解析法を開発することを目標としている。そのため、次の2つの研究項目(1)小角電子線散乱法を用いた磁性材料・誘電材料における定量的電磁場解析、(2)小角電子線散乱データを用いた位相回復法による電磁場イメージング法の開発 を設定し研究を遂行している。 初年度は研究項目(1)を中心に研究を進めた。“小角電子線散乱法”の検出感度の評価を行い、電磁場定量解析法としての潜在能力を調べた。電界放出型TEMを用い電子線の空間コヒーレンスを2×10-7 radを確保しながら小角電子線散乱実験を行ったところ、5×10-7 radの長周期構造による電子線のBragg回折を検出することができた。これは同程度の電子線の電磁場偏向が検出できることを意味している。また、ビームを絞り空間コヒーレンスを低下させた実験条件においても、検出系を工夫することにより5×10-6 rad程度の電子線の電磁場偏向を検出することができることを明らかにした。これらの実験データは小角電子線散乱データを用い位相回復法を応用した実空間電磁場分布像の再構築の適用範囲を考察する上で重要な知見であり、また、小角電子線散乱法に基づく電磁場イメージング法を新たに開発するうえで有用な基礎データとなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の研究目標を達成する上で、小角電子線散乱法により検出可能な角度領域を検証することは重要な研究課題である。この点に関連して、初年度の研究活動では、構造物によるBragg回折データと電磁場による偏向データの検出可能領域を見積もることができた。また、検出系を改善することで、更に検出領域の向上が見込まれることも明らかになった。これらの実験データは、位相回復法を応用した実空間電磁場分布像の再構築における小角電子線散乱データの適用範囲を決める上で重要な基礎データとなる。次年度以降の研究の基盤を確立できたことから、研究はおおむね順調に進呈していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究成果を踏まえ、研究項目(1)、(2)の研究を継続する。標準試料として、初年度用いた磁性人工格子に加え、微細な磁気状態が出現することが明らかになっているカイラルらせん磁性体を用いる。精密磁気構造解析を進めることにより検出感度限界の評価を行う。また、自己組織化で整列する磁性微粒子や微細加工技術を用いて作製する磁性人工格子を用い、Bragg回折データと電磁場による偏向データを分離して検出する実験条件を確立することを目指す。 小角電子線散乱データの定量性を生かし、位相回復法を応用した電磁場イメージング法を開発する。電界放出型TEMを使用し10-7rad以下の電子線空間コヒーレンスを確保し、磁性人工格子の小角電子線散乱データを獲得する。また、位相回復プログラムを構築し、計算機上で小角散乱データを用いた実空間電磁場分布イメージの再構築が可能であることを実証する。これにより位相回復に必要な検出精度などの実験条件を探る。 ローレンツ法により取得される磁気イメージング像や導入済みのLLG磁気シミュレーターにより得られる理論像との比較を行い、再構築される実空間電磁場分布像の品質を検証する。必要に応じて位相回復プログラムを変更し、また、振幅像と散乱データの収得方法を改良する。これにより小角電子線散乱データを用いた電磁場イメージング法を確立する。また、本手法の潜在能力を最大限に引き出すために必要な実験条件を確立する。
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