研究課題/領域番号 |
25600104
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 香川高等専門学校 |
研究代表者 |
岡野 寛 香川高等専門学校, 一般教育科, 教授 (60342565)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 光電変換 / 化学電池 / 酸化物半導体 / 酸化ニオブ |
研究概要 |
天然黒鉛を原料とするグラファイトシートを用いて弱光時には化学電池として動作し光励起によりパワーアップするソーラーアシストバッテリーを開発することを目的とした。今年度は当初の計画通り、主にグラファイトシート中への酸化物半導体の分散方法の検討、種々のバンドギャップを有する酸化物半導体の探索を実施した。 グラファイトシート中への酸化物半導体の分散方法については、通常の紛体プロセスを使用し、グラファイト粉末と酸化物(酸化チタン)を乳鉢でよく混合し、その後通常のグラファイトシート作製工程でシート化し評価した。しかし、目視により既に酸化物微粒子は偏析しており、また、含有量10%以上で既に機械的強度が不足し次の工程に進むことは困難だと判断した。当初企画のもう一方の手法である、ゾルゲル法の応用、すなわち酸化物をゲル状の状態でグラファイトに分散させる手法を試みるため、酸化物(酸化ニオブ)含有のゾル溶液の作製を試みた。出発物質に塩化ニオブを使用することにより、500℃以上の焼成で酸化ニオブの析出可能なゾルの作製に成功した。今後は、グラファイト中に発泡剤として混入し焼成により均一に分散させる技術の開発が必要である。 太陽電池としての変換効率向上のため、種々のバンドギャップを有する新規酸化物の作製を試みた。熱力学的に安定な状態では選択肢が限られるため、非平衡状態での材料作製が可能なプラズマプロセスを用いて実施した。具体的には反応性スパッタ法により酸素分圧を大きく変えて酸化ニオブを作製し種々の価数のニオブ系酸化物薄膜を作製し、光学的バンドギャップを評価した。その結果、NbO,NbO2、Nb2O5を作り分けることに成功し、特にNbO2は可視光域にバンドギャップを有し、新規の太陽電池用材料として期待できることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電池を組んでの実証実験はこれからであるが、今年度の大きな目標の一つであった、種々のバンドギャップを有する酸化物半導体の探索という点で、非平衡状態ではあるがNbO2が可視光域にバンドギャップを有し、既存の紫外広域にバンドギャップを有する、Nb2O5と共存して使用することで、光電変換効率の向上につながる可能性を見出したのは今後につながる大きな成果である。 また、グラファイトシート中への酸化物半導体の分散方法についても、早急に固相法に見切りをつけ、ゾル含有法を検討し、グラファイトの発泡剤も兼用できる可能性のある強酸性のゾル液の作製方法を確立できたのも大きな成果である。 これらの、材料、基板作製方法に独自性が付加され、今後は本研究で提案の電池構造(ソーラーアシストバッテリー)と融合することで、弱光時には化学電池として動作し光励起によりパワーアップするソーラーアシストバッテリーを開発するという当初計画を十分に達成できる見通しがついた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も引き続き、材料基板(グラファイトシート中に酸化物半導体を分散)と新規酸化物半導体の開発を最優先に進めていきながら、後半以降に電池特性の評価を実施する予定である。 まずは、昨年度新規に開発した、ニオブ系ゾル液を使用してゾル含有法によりより効率的かつ均一にナノレベルの酸化物微粒子をグラファイトシート中に分散させる技術を確立する。ゾル中の金属イオン濃度、グラファイトとの重量比率、発砲温度、焼き付け温度などが重要な作製パラメータとなるため、これらを適宜最適化しながら進めていく。ある程度の品質の酸化物含有グラファイトシートが形成できた後は、同時に電池構造を作成し、化学電池としての特性と光アシストによる、増幅効果を評価する予定である。 プラズマプロセスにより作製したNbO2については、固相法での生成を検討すると同時に、本研究代表者がこれまでに考案した、スパッタ法による2次元ナノアイランドの作製技術により、光電変換特性を評価する予定である。 また同時に、ポリプロピレン不織布を用いた電解質保持剤の作製にも着手する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
達成度の項で記載したとおり、本年度は新規酸化物半導体の探索とグラファイトシート基板の作製という、本研究課題の基盤技術の研究に特化したため、電池構成を作成しての種々の特性評価が次年度に持ち越しとなった。そのため本年度購入予定であった、充放電装置を使用機会に合わせて来年度の購入にしたのが次年度使用額が生じた一番の理由である。 また、当初の計画書で記載したソーラーシミュレータは別予算(企業との共同研究費)で支出し、ICP発光分析装置については、当面は既存の原子吸光装置で置き換え可能な目途がついたため購入を見合わせたため、当初より執行額減となった。 化学電池としての評価を進めるため、充放電装置の購入を予定している。また、各種消耗品の購入や旅費については計画通りの遂行を予定している。
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