スーパーオシレーションは、帯域制限のある関数に共通に見られる現象であり、光を集光する場合もこれに該当する。一般には、光の回折限界によって光の集光スポットは0.5λ(λ:波長)となるとされている。しかし、スーパーオシレーションによれば、さらに小さなスポットが形成可能となる。本研究では、ベクトルビームを用いたスーパーオシレーションの研究を進めている。本年度は共焦点レーザー顕微鏡に偏光および位相を制御したレーザービームを導入し、擬似的生体試料や固定標本からの蛍光および散乱光画像計測を行い、スーパーオシレーションに基づく極微小光スポットが超解像イメージングにおいて有用であることを実証した。具体的には、多重リング構造の径偏光ビームを液晶素子を用いて形成し、これを顕微鏡対物レンズで集光し、試料からの蛍光あるいは散乱光像を取得した。同時に、ベクトル回折積分に基づいて、焦点付近での電磁場の振幅を計算し、実験結果との比較検討を行った。実験で得られた微小球からの散乱光画像と、計算結果は極めて良い一致をしており、実験の精度が高いことを示すことができた。また、スーパーオシレーションによるスポット径は波長の四分の一であることが分かり、この値は共焦点顕微鏡で伝達可能な最大空間周波数と一致している。さらに、直径170nmの蛍光ビーズが凝集した試料に対して得られた蛍光画像では、ひとつひとつのビーズを明確に判別できることを示すことができた。以上のように、本研究では、従来の光学顕微鏡の限界を打破する分解能を達成することができた。
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