研究課題/領域番号 |
25600107
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
中沢 正隆 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (80333889)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | レーザ歪み・津波計測 / ファイバセンサ / 周波数可変ファイバレーザ / 光ファイバネットワーク |
研究概要 |
H25年度は、まず津波計測用センサ部を新たに設計・試作した。つぎに試作したセンサの性能試験として、水槽を利用した構成の実験系を利用して、センサの水位変化に対する測定分解能を評価した。 津波計測用センサの設計・試作において、従来のファブリー・ペロー共振器の代わりにファイバリング共振器を利用した新たなセンサ構造を提案し、その1次試作を行なった。新たに本課題で試作したセンサは、円筒構造(直径120 mm、高さ240 mm)に加工したアルミ材に全長4.5 mのファイバリング共振器を巻き付けるといった簡便かつ安価な構造を有する。そして、水圧変化に伴うセンサの直径方向の変化をリング共振器の共振周波数の変化として測定するものである。 つぎに試作したセンサと2台の周波数可変ファイバレーザを組み合わせて、レーザ津波計を構築し、水槽を利用した水位計測を実施した。その際、温度変動によるセンサ部の直径方向変化D(ΔT)は水位計測において誤差となる。そこで、一方のレーザはD(ΔT)を、他方のレーザは温度と水圧の両変化に伴う直径変化量D(ΔT)+D(ΔP)を検出し、それらの差分D(ΔP)をレーザ間のビート信号の変化から測定する方式を採用している。実験を行った結果、温度変動に伴う測定誤差を50分の1に低減させることに成功した。この条件のもと、水槽の水位を約1 cmずつ変化させていった際に、12.2 MHz/cmのビート周波数の検出感度を得た。ビート信号の短期的なスペクトル揺らぎ(±110 kHz)から算出される水位変化量の測定誤差は90 μmであり、このことより試作したセンサにより津波計測において極めて高い測定感度が得られることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究課題であったセンサの試作ならびに簡便な試験系を用いたセンサの性能評価を予定どおり実施した。具体的には、簡便でかつ安価なセンサを新たに設計・試作し、作製したセンサを用いた水位計測の原理実証実験を行った。その結果、試作したセンサにより津波計測において高い測定感度が得られることを実証した。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度はセンサの改良試作ならびにセンサの最終試験を実施する。センサの改良において、歪み計測における測定感度を向上させるために、(1)測定対象となるビート周波数の短期的な揺らぎ幅の低減、および(2)圧力に対するセンサの直径変化の高感度化を図る。 (1)の改良において、ファイバリング共振器を構成する2つの光カプラの挿入損失を低減し、共振器のフィネスを高めることで、レーザ周波数の共振器へのトラッキング精度を向上する。また、センサ周辺にかかる振動成分を抑制することで、リング共振器の共振周波数の揺らぎ幅を低減する。さらに、ビート周波数のドリフトを低減させる。 (2)の改良では、円筒部の厚みや形状を見直し、圧力に対しセンサ部が変形し易くなるよう工夫を施す。また、温度変動に伴うビート周波数変化の残留成分をさらに抑制するよう、センサ構造ならびにファイバリング共振器の巻き付け位置を改善する。 以上のように改良したセンサの最終試験として、研究協力者が所有する施設を利用し、ボアホールにおける歪み計測ならびに海底における水位計測を実施する。
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