研究課題
挑戦的萌芽研究
「螺旋波面(偏光に依存しないマクロなヘリシティー)を有する光(光渦)が物質(金属)と相互作用すると、光渦のヘリシティーがそのまま物質に転写されてナノスケールの螺旋構造体(カイラル構造体)ができる」、すなわち、「偏光に依存しない光のヘリシティーが物質のカイラリティーを決定する」という新奇物理現象を研究代表者は世界で初めて発見した。光には、偏光に依存しないマクロなヘリシティーに加え、円偏光による局所なヘリシティーもある。研究代表者が発見した新奇物理現象を発展させて本研究では、「局所(偏光)とマクロ(螺旋波面)の光のヘリシティーを合成(光波のヘリシティー・シンセシス)すると物質のカイラリティーがどのように制御できるのか?」という究極の課題に挑戦する。また、光のヘリシティーが物質に転写されるその瞬間を可視化するとともに、光波のヘリシティー・シンセシスによる物質のカイラル制御に基づくカイラル・フォトニクスの創成を狙う。光異性化反応を介して起こる質量移動によってアゾポリマーには表面レリーフが形成される。表面レリーフ形成の時間スケールは秒のオーダーで一般的なCCDカメラを活用しても計測可能である。そこでアゾポリマーの表面レリーフ形成に注目し、光渦の軌道角運動量が転写されるダイナミクスを直接計測した。軟化したアゾポリマー(シス体)が軌道角運動量を受取り公転運動しはじめ、やがてカイラルな表面レリーフへと変形していく様子がリアルタイムで捉えられた。また、全角運動量(軌道角運動量とスピン角運動量のベクトル和)が表面レリーフの形状に大きく影響することが分かった。すなわち、全角運動量がゼロ(軌道角運動量とスピン角運動量の符号が逆)の場合、表面レリーフはカイラル構造にならない。これらの実験事実に関して、電磁気学的相互作用と流体シミュレーションを組み合わせた理論的考察を進めている。
1: 当初の計画以上に進展している
アゾポリマーの表面レリーフ形成に注目することで現象のリアルタイムな計測が可能になった。特に軟化したアゾポリマー(シス体)が光渦の軌道角運動量を受取り公転運動しはじめ、やがてカイラルな表面レリーフへと変形していく様子をリアルタイムで捉えたのは世界で初めてである。また、全角運動量(軌道角運動量とスピン角運動量のベクトル和)が表面レリーフの形状に大きく影響することも分かった。すなわち、全角運動量がゼロ(軌道角運動量とスピン角運動量の符号が逆)の場合、表面レリーフはカイラル構造にならないことも明らかにした。これらの成果はNature系学術誌Scientific Reportsに掲載された。
現在、これらの実験事実に関して、電磁気学的相互作用と流体シミュレーションを組み合わせた理論的考察を進めている。また、カイラルな表面レリーフをデバイス展開するための電磁場解析を進める。これにより当初の目標が十分達成できると予想される。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 3件)
Scientific Reports
巻: 4 ページ: 4281
doi:10.1038/srep04281
Physical Review Letters
巻: 110, 14, (2013) 143603. ページ: 143603-1-5
10.1103/PhysRevLett.110.143603