GaAs系光デバイス製作技術として混晶化選択酸化手法を提案した.混晶化は,ヘテロ界面の原子相互拡散を行う技術であり,任意領域に導入した点欠陥で界面混晶化を促進する.これをGaAs系のAlAs選択酸化層に適用し,欠陥導入と熱処理による混晶化でAlAs層のAl原子を周囲のGaAs層に広げる.この結果,AlAs層の実効膜厚が減少し,その場所の選択酸化速度が低下するため,選択酸化の自己停止とそれによる非選択酸化領域,つまり光と電流の制御構造の形状自由度を高める. 初年度に,混晶化と選択酸化の数値解析モデルを作成し,混晶化選択酸化による形状形成の基礎的シミュレーションを可能とした.本年度(最終年度)は,混晶化選択酸化の実験的条件解明と光デバイス応用のための面内形状制御を行った. 実験条件は,欠陥導入用SiO2膜厚30-500nm,熱処理温度820-880℃で最大3時間,選択酸化は450度とした.混晶化3時間で,通常酸化より酸化速度が半減することを確認した.一方,混晶化2時間では酸化特性が不安定であり,また,当初想定した数分レベルでは酸化制御ができず,原子相互拡散特性が影響している可能性を指摘した.次に,SiO2を30nm,250nm,500nmの厚さで成膜し,880℃3時間の混晶化熱処理を行い,薄いSiO2より厚い方が酸化速度が低下し,SiO2膜厚で混晶化制御可能なことを明らかにした.また,SiO2とAlAs層が近接しているほど選択酸化速度抑制に効果的なことを確認した.これら現象は,SiO2からの欠陥導入特性により考えられる傾向に一致する. 以上の結果を利用して,薄いSiO2のストライプの一部に厚いSiO2を成膜した構造で,混晶化選択酸化を行い,同一基板上の面内で酸化特性制御による形状変化が得られることを実証した.これにより,光デバイスの高度化を支える新しい製作技術の基礎を構築した.
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