研究実績の概要 |
三ヶ年計画の最終年度にあたる今年度は, 前年度までに合成に成功しているナノ粒子を担持したハイブリットナノカーボン物質の光学特性解明に重点的に取り組み, 以下の成果を得た. 前年度までにカーボンナノチューブ表面に垂直配向グラフェンを合成し, さらにグラフェン表面に白金粒子を担持することに成功している. 最終的に分子モーターとしての動作を実現するためには, 外部光信号により本ハイブッリットナノカーボン物質の並進運動制御を実現する必要があり, そのためには本研究で合成した物質の光学特性を明らかにすることが極めて重要である. そこで, グラフェン/カーボンナノチューブハイブリット物質のラマンスペクトルの詳細な測定を行った. その結果, 白金担持前のグラフェン/カーボンナノチューブではグラファイト構造由来のGバンドと欠陥由来のDバンドの比が1対1程度であったのに対し, 白金を担持することでDバンドの強度が明確に増大する現象が観測された. この結果は白金ナノ粒子表面に生成された表面プラズモンにより, 照射レーザー光の電界強度が局所的に増大するプラズモン共鳴によって得られた結果と考えている. Dバンドのみが特異的に強く表れた理由に関しては, 白金担持プロセスにおいて白金ナノ粒子とグラフェンとの間で化学反応が進行し, グラフェン構造中に欠陥が導入され, 結果として白金ナノ粒子が担持されている周辺領域がアモルファス化したためと考えている. 本研究で得られた白金ナノ粒子担持グラフェン/カーボンナノチューブの特異なDバンド増強効果は, 本ハイブリットナノカーボン物質が外部光に対して特異な応答を示すことを実証し, さらにプラズモン共鳴を伴った局所応答の可能性をも示した重要な成果である. 従って, 本成果は分子モーターはもちろん, それ以外のバイオ応用全般においても, 今後重要な貢献が期待できるものと考えている.
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