研究課題/領域番号 |
25600122
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
近藤 博基 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50345930)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | プラズマ / ラジカル / 液中プラズマ / その場観察 / 走査型電子顕微鏡 |
研究概要 |
計画初年度である本年度では、ウェットSEM カプセル(SEM:走査電子顕微鏡)に導入可能で、大気圧下および液中でプラズマ生成可能な超小型マクロプラズマ源を構築した。また、脆弱なメンブレンを電子線窓として有するウェットSEM カプセルの密閉構造を考慮し、プラズマ生成に必要なガス導入、プラズマ生成に伴うガス発生による内圧の上昇を補正し、内圧を一定に保つための排気用のノズル、圧力モニタ、環流システムを検討した。 一方、観察対象の一つであるミドリカビの胞子の胞子に関して、これまでに既に取得しているプラズマ照射に伴う死滅速度や電子スピン共鳴(ESR)信号などの変化を更に解明するために、同プラズマ源から生成されるラジカルなど活性種の密度や空間分布、プラズマ源から放出されるガス流の時空間計測を進めた。具体的にはシュリーレンシステムを用いたガス流れの時空間計測によって、大気の巻き込み状況などを明らかにした。また、プラズマを照射した培養液中における、がん細胞の選択的死滅のメカニズムを明らかにするために、培養液中に生じるフリーラジカルの計測を行った。スピントラップ剤を使用したESR計測によって、プラズマ照射による培養液中でのヒドロキシルラジカルラジカルの生成と、照射後の減衰過程、過酸化水素(H2O2)の生成が明らかとなった。他方、プラズマ照射した培養液を用いた細胞培養実験の結果では、必ずしもH2O2濃度と細胞生存率に関連が無い場合が確認され、H2O2以外の抗腫瘍成分の存在が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウェットSEMカプセルに搭載可能な超小型マクロプラズマ源の構築に成功した。同プラズマ源は、本研究のために設計・作製した完全なオリジナルで有り、当初計画通り、プラズマ照射下での走査型電子顕微鏡観察の準備が完了したと言える。また、プラズマ照射によって、培養液中で生成される成分に関しても、電子スピン共鳴(ESR)を用いた解析が進んだ。
|
今後の研究の推進方策 |
2年度目では、当初計画に従って、液中プラズマ放電を確立すると共に、液中プラズマ照射下でのミドリカビ胞子のリアルタイム電子顕微鏡観察に取り組む。また、ミドリカビ胞子以外の細胞、胞子についても、プラズマ照射下での電子顕微鏡観察を展開していく。その一方で、同プラズマ源から照射される活性種(ラジカルなど)の定量分析を行い、プラズマとバイオマテリアルとの表面反応を定量的に明らかにする。更に、EDXによる元素マッピングなども実施して、プラズマ照射がバイオマテリアル表面の及ぼす変化を多角的に解明する。
|