本研究の目的は車の排ガス内の炭化水素化合物の分子識別可能な小型センサーを作成するため、気体吸着能力が高い生体材料(コウイカの骨)に注目し、その物理的特性を理解したうえで大気圧プラズマを用いてコウイカの骨の生体模倣材料を作成することである。平成25年4月から2年間に以下の3課題の知見を得た。 ① 現在解明されていないコウイカの骨内部の気泡吸着のメカニズムを解明する。 ② 大気圧マイクロプラズマジェットを用いてコウイカの骨の構造を模した多層構造ナノカーボン構造物を作製する。ナノカーボン構造の細孔サイズをプロセスガスによって制御する。 ③異なる細孔を有するナノカーボン構造物と炭化水素化合物の吸着・脱離のメカニズムを解明し、分子識別可能な超小型ガスセンサーを作製する。 ①:コウイカの骨の構造が他の動物の骨と比べ特殊であること、他の動物の骨細胞もプラズマ照射時間、照射方法によって3次元構造をとることが分かった。②:大気圧マイクロプラズマジェットのプロセスガス種の計測、プロセスガス導入①のよって異なる組成、サイズのナノカーボン構造物を作製できることが分かった。励起分子とプロセスガス分子の反応によって生じるナノカーボン構造物の化学構造変化を密度汎関数法を用いて予測した。さらに、基板表面粗さをケミカルドライエッチングにより変化させ、ナノカーボン構造物の高さ調整を試みた。③:プラズマ気相堆積法(PECVD)で作製したナノカーボン膜を可能な限り均一に堆積させるため、基板の表面電位を除電によって初期化し、ナノカーボン膜の表面電位を計測した。そして、異なる分子量の炭化水素化合物を吸着・脱離させ、その際のナノカーボン膜の抵抗値の時間変化を測定し、吸着量と抵抗値の変化の関連性を評価した。
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