今年度は、ヒドラジン生成のためのプラズマ部の最適化を行い、合わせて生成された自己組織化銀粒子パターンの評価に着手した。ヒドラジン生成のための材料ガスとしては、アルゴンをキャリアガスとしたアンモニア混合気体を供給した。これを誘電体バリア放電により生成された大気圧プラズマ部に供給し、大気圧プラズマ内を通過する間にアンモニアの解離と反応を通してヒドラジンを合成した。 我々は、プラズマ部として、ガス配管とほぼ同じ外径のガラス管内に、そのガラスを誘電体バリアとする形態でプラズマを生成した。長さ25 mmのプラズマ部の数を直列に1~4個と変化させ、また誘電体バリア放電を生成する電源周波数を10~30 kHz変化させて、ヒドラジンの生成量を紫外吸収分光法により測定した。すると、プラズマ部の数は4個までにおいては数を増やすほど増加した。また、プラズマの生成個数を4個としたときの電源周波数による依存性は緩慢で、20 kHz付近に最適値があると推定された。すなわち、アンモニアの解離を促進するためには解離を主導するプラズマ中の電子の生成が欠かせないが、一方で生成されたヒドラジンまで分解してしまうことが考えられる。すなわち、以上の設定条件の範囲内で、取り出しうるヒドラジン量の最適条件が含まれていると考えられる。 そして、生成したヒドラジンによる還元反応により得られる銀のパターンについての機能性評価を行った。具体的には、今年度は導電率測定を行い、導電性薄膜と見なしたときに、市販の透明導電膜と同オーダーの導電率は確保できたが、透過率が50%程度に留まり、今後その改善を目指す。さらに、ボックスカウンティング法によるフラクタル次元を評価し、1.6~1.9という値を得た。
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