今年度は、大気圧プラズマにより生成されたヒドラジンによる自己組織化銀粒子パターンの生成と評価、およびその他機能性薄膜処理を行った。ヒドラジン生成のための材料ガスとしてアルゴンをキャリアガスとしたアンモニア混合気体を供給し、誘電体バリア放電により生成された大気圧プラズマ部を通過させた後、ヒドラジンを合成した。そして、硝酸銀水溶液表面へのヒドラジン等の粒子輸送制御を行うことで、各種の銀パターン作製に成功した。 まず、粒子輸送制御を行わない条件において、種々のフラクタル状のパターン形成に成功した。プラズマ部の制御によりヒドラジンの生成量を密度を1立方cm当たり14乗~15乗で調整したところ、導電性と絶縁性がパーコレーション機構の転移点を伴って実現された。このようなフラクタル形状のパターン構造については、粒子分散・凝集理論に基づく数値計算で良く説明できた。また、絶縁性パターンについて光応答特性を評価したところ、赤外光(波長8-12ミクロン)の領域で構造起因の吸収スペクトルが現れた。これは、磁気共鳴効果を示す異常透磁率メタマテリアルの特性と推定された。 そして、粒子輸送を制御するため、硝酸銀水溶液に50-200ミクロンの粒子を多数導入し、それによる基板上の銀パターン制御を目指した。まず、粒子間部分にはヒドラジンが入り込み、同様のフラクタル状パターンが形成された。一方で粒子設置部においては、導入粒子の外縁部に添う形でスプリットリング状の銀パターンが現れた。光学応答特性においては赤外光領域での応答性は失われておらず、また100ミクロンオーダーのスプリットリング状パターンはテラヘルツ波帯での応答性を期待でき、マルチ周波数帯メタマテリアルの一括作製プロセスを実現した。 また、機能性薄膜処理については、ヒドラジンによる表面酸化膜層の制御により、抵抗変化薄膜のスイッチング電圧制御に成功した。
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