研究課題/領域番号 |
25600125
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
比村 治彦 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (30311632)
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研究分担者 |
三瓶 明希夫 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 講師 (90379066)
蓮池 紀幸 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 助教 (40452370)
政宗 貞男 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (00157182)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 酸素負イオン / ジエチル亜鉛 / 酸素ラジカル / RFプラズマ / 低温プロセス / ZnO / ZnO薄膜 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、酸化物エレクトロニクス分野のCVDで用いられている酢酸亜鉛やジエチル亜鉛溶液のミスト化手法に、プラズマ分野のスイッチングRF負イオンプラズマと非中性プラズマトラップ、物理化学分野の気相中におけるイオンクラスター成長計算の知見を統合して、原理的に酸素原子(O)の抜けがない酸化亜鉛ZnO膜からZnO量子ドットまで、これらを低温下の気相中で成長させるという新たなプラズマプロセスに挑戦することである。研究初年度ではプロトタイプの実験装置を設計製作し、初期実験データを得た。その内容については、投稿論文として投稿する予定である。 研究2年目にあたる平成26年度では (1) 基板堆積の最適化条件の探索 (2) 基板表面の観察 の2項目を計画していたが、研究は順調に進んだ。具体的には、項目(1)について、酸素ガス・ジエチル亜鉛流量・基板温度・堆積時間等の実験パラメータを変化させながら、ガラス基板上への堆積実験を繰り返した。そして、項目(2)になるが、堆積実験で得られた多数の堆積膜を、主として学内の機器分析センターに設置してある様々な共同利用設備を使って分析し、得られたデータ値を比較した。 データ解析の結果より、ZnOが確かに基板の上に堆積していることは確認された。しかし、以下の2つの疑問が残されている。第一に、本研究のポイントは、気相中での膜生成に対する酸素負イオンの効果にあるが、その効果は不明のままである。実際、実験結果は、膜生成に酸素ラジカルが深く寄与していると考えることでも解釈することができる。第二に、実験で得られた物性値に基板温度依存性が見られる。この事実は、ZnO生成が基板上で行われていることを示唆しており、この点に対する改良も必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた3項目の内、実験の2項目を完全に実施している。実験パラメータが多いためにかなりの時間を要する実験にもかかわらず、それらを遂行できたことは大きい。 一方、得られたデータより、現在のプロトタイプ実験装置では酸素負イオンの効果を明確にすることができないため、実験装置の改造が必要なことが判明しており、この点が区分(2)と自己評価する理由である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の実験結果より、(1) 酸素負イオンと酸素ラジカルを分離する機構を実験装置に施す必要があること、また、(2) 酸素負イオンの絶対量を増やす方法を考案する必要があることが明らかになっている。 (1)「酸素負イオンと酸素ラジカルを分離する機構を実験装置に施す必要性について」 この機構を追加しなければならない必要性についてであるが、実験ではレーザー脱離電子電流値から計算される酸素負イオンの数密度は、cgs単位で10の10-11乗である一方、酸素ラジカルの数密度は10の13乗と予想されている。もともと酸素ラジカルの反応性についてはよく知られている訳であり、それを数的に少なくしないと、酸素負イオンの効果を評価することができない。 (2)「酸素負イオンの絶対量を増やす方法を考案する」 項目(1)で、酸素負イオン数密度と酸素ラジカル数密度の比が小さいことを述べたが、その比の値は、酸素負イオン数密度を増加することでも上がる。酸素負イオンは不安定な状態なので、この状態を維持させるためには何らかの工夫が不可欠である。電磁場を用いた方法から検討を始めていく。
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