研究実績の概要 |
次世代のガンマ線用シンチレータとして期待されているEu:SrI2シンチレータ結晶において、高価数元素の共添加によりさらなる高発光量化の達成を実現するべく、本研究課題では、A.改良型μ-PD法による高価数元素共添加Eu:SrI2単結晶作製、B.共添加Eu:SrI2単結晶の切断・研磨技術の確立、C.共添加Eu:SrI2単結晶の結晶性評価・組成分析、D.共添加Eu:SrI2単結晶のシンチレーション特性評価の4項目を実施した。
改良型μ-PD法によって結晶作製した共添加なし、La,GdおよびLu1を%共添加したEu7.5%:SrI2単結晶を作製した。作製した結晶は、すべて無色透明を示した。これらの結晶は、新たに確立した切断・研磨技術によって加工を行った。特に当該材料は吸湿性が高く大気中での切断・研磨が困難であるため、水分濃度・酸素濃度を1ppm以下に制御したグローブボックス内で切断・研磨を行った。さらに、研磨で使用する溶媒には100%の合成油を使用することで研磨中に潮解が生じないようにした。 ICP-OESによる組成分析結果から、Euはほぼ仕込組成通りの添加量が結晶中に含まれていることが分かった。一方、共添加したLa、GdまたLuは仕込組成(1mol%)に対して、非常に少ない量しか結晶中には添加されておらず、それぞれ0.04%、0.01%、0.01%の置換量となった。共添加元素の中でLaが最も多く結晶中に添加できたのはイオン半径の違いによると考えられる。 137Cs放射線源からのガンマ線励起下における波高分布スペクトルの結果から、Laを共添加した結晶は、共添加なしの結晶に比べて、発光量・エネルギー分解能の値が悪くなっていることが分かった。これはフォトルミネッセンス測定とX線励起ラジオルミネッセンス測定にて観測された約500 nm付近の発光の影響で本来必要な435 nmにおける発光量が減少したことが示唆される。
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