研究課題/領域番号 |
25600140
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松山 智至 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10423196)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 放射光 / X線集光ミラー |
研究概要 |
X線集光ミラーは,X線分析やX線顕微鏡の発展のために必要不可欠である.X線は波長が短いため,わずかな形状誤差(設計形状からのずれ)であっても容易に波面が乱れ,予想通りの集光を行うことができなくなる.そのため,X線集光ミラーは,形状誤差数nmの精度で作製する必要がある.本研究では,イオンビーム加工法を用いたX線集光ミラー作製のための新規形状創生プロセスの確立を目指している. 本年度は,①イオンビーム加工装置の高度化,②イオンビーム照射後表面のAFM観察,③平面ミラーの試作を行った. ①では,走査システムの改良・高度化と最大基板サイズを100mmから150mmまで拡大させるなどの装置改良を進めた.これによって研究を進める準備を整えた. ②では,各種材料に対してイオンビーム照射後の表面をAFMによって観察した.その結果,金属などは表面が著しく荒れたが,カーボンやシリコンではほとんど変化がないことが分かった.これらの知見は,高反射率ミラーの作製や,成膜された後のミラーの形状修正に利用可能であると考えている.③はシリコンウエハ上に平面ミラーを試作した.開発した装置で加工した結果,一度の加工で形状誤差5nm(peak-to-valley)のミラーが得られた.この精度は加工精度に換算すると,約2%(peak-to-valley)の精度に相当する.これによって,イオンビーム加工の加工精度を確認することができた.さらに装置を高度化し,この精度を向上させる予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたイオンビーム加工装置の高度化と,形状評価手法の確立が完了したためである.ただし,新たな問題とし,イオンビーム中に中性ビーム(0.06%)が存在していることが分かり,26年度は新たにこの対策を進める予定でいる.
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今後の研究の推進方策 |
26年度は,①中性イオンビーム対策,②ビーム偏向器の高度化,③加工精度の向上,④楕円ミラーの試作 を進める. ①では,中性ビームのより詳細な評価と共に,偏向器を使って中性ビームのみカットできるシステムを構築する. ②では,偏向器に与える電圧を制御し,ビーム照射位置を高精度に制御できるシステムを確立する. ③では,加工精度向上のために,①②を含む様々な対策(フレア対策,ビーム電流の安定化,デコンボリューションアルゴリズムの高精度化,等)を行う.あと10倍の精度向上を目指す. ④では,最終的にデモ実験として,高精度な楕円ミラーをシリコンインゴット上に作製する.この形状をもとに波動光学シミュレーションを行うことで,仮想的な集光実験を実施する.これによって,ミラー形状の評価を行う(放射光施設にてビームタイムを取得できれば集光実験を行う).
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画では,モーターとモーションコントロールボードの変更を考えていたが,ソフトウエアのみの改良でも性能を向上させることができることが分かったため,モーターとモーションコントロールボードの購入を取りやめた.その他に,消耗品費を節約できたため,次年度使用額が生じた. 主に,シリコン基板の購入や,電極作製のために使用する.前者は,X線ミラー試作のために必要であり,後者は中性ビーム除去のために必要である.
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