X線集光ミラーは,X線分析やX線顕微鏡の発展のためには必要不可欠である.X線は波長が短いため,わずかな形状誤差であっても容易に波面が乱れ,予想通りの集光ができなくなる.そのために,X線集光ミラーは,形状誤差数nmの精度で作製する必要がある.本研究では,イオンビーム加工法を用いたX線集光ミラー作製のための新規形状創生プロセスの確立をめざしている.本年度は,①ビーム偏向器の開発,②ビーム偏向器を用いたコンピュータ制御加工,③楕円ミラーの作製,④波動光学シミュレーションを用いた性能評価を行った. ①では,機械式のステージ走査によって発生する送り速度誤差を完全に除去するためにイオンビームの方向を任意に制御できる静電偏向システムを開発した.これによって,位置決め精度・送り速度精度の非常によい加工が可能となった. ②では,偏向器の電場強度を任意に制御することで,コンピュータ制御加工をできるようにシステムを構築した.加工すべき除去形状をコンピュータにインプットするだけ,最適な電圧シグナルを印加することが可能となった. ③では,本システムを用いて楕円ミラーを作製した.加工後の形状を取得し評価したところ,誤差1nmの楕円ミラーを作製することに成功した. ④得られたミラーの性能を評価するために波動光学計算を実施した.計算結果を解析したところ回折限界集光が可能であることが分かった.
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