研究課題/領域番号 |
25600142
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
納冨 昭弘 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80243905)
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研究分担者 |
若林 源一郎 近畿大学, 付置研究所, 講師 (90311852)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 反跳陽子比例計数管 / n/γ弁別 / 立ち上がり時間 / 中性子 / 放射線加重係数 |
研究概要 |
今年度は、新規に購入した、高速タイムディジタイザを用いて、ポリエチレン内張型反跳陽子比例計数管LND28220の前置増幅器出力パルス波形観測システムを構築することに重点をおいて、システムの整備を行った。その結果、メモリーに蓄積されたパルスデータから、個々のパルスの10%~90%立ち上がり時間を自動的に抽出することができるようになったが、以前、英国・National Physical Laboratory でほぼ同じ仕様の高速タイムディジタイザを用いて測定を行った結果と、いくつかの食い違いが見られた。この点については、同研究所と連絡をとりつつ現在も原因を検討中であり、その結果を反映させて、システムの完成を目指して開発を続けていく予定である。 また、これまで使用してきた、ポリエチレン内張型反跳陽子比例計数管LND28220[封入ガスCH4(100%), 1気圧)]に加えて、標準的な比例計数管の計数ガスである、P-10ガスを用いた同仕様のポリエチレン内張型反跳陽子比例計数管LND2823[封入ガスAr(90%)+CH4(10%), 0.57気圧]のパルス出力特性を従来のアナログ的手法で調査し、比較を行った。中性子線源には、Cf-252線源とAm241-Be線源を用いた。また、γ線の線源にはCo-60線源とCs-137線源を用いた。この結果、LND2823のパルス立ち上がり特性は、LND28220同様、中性子線とγ線に対して明らかに異なる分布を示した。このことから、ポリエチレン内張型反跳陽子比例計数管に見られる中性子線とγ線に対する異なるパルス立ち上がり時間特性が、使用する充填ガスに依存しない、一般的な現象であることを確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アナログ的な手法については、従来とほぼ同様の実験結果を得ることができ、さらに新しい成果として、研究対象としている現象がポリエチレン内張り型反跳陽子比例計数管に対して一般的な現象であることを確かめることができた。しかし、今年度開始した高速タイムディジタイザを用いた手法では、以前にほぼ同じ仕様の高速タイムディジタイザを用いて測定を行った結果と、いくつかの食い違いが見られた。現在、この原因の解明に時間を要しているため、やや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、高速タイムディジタイザによる観測システムの開発をすすめて、以前の結果との食い違いの原因を究明する。これと併せて、アナログ的な手法により得られた、立ち上がり時間分布スペクトルのオンライン処理手法の検討を開始する。すなわち、アナログ的な手法によれば、中性子とγ線に対する立ち上がり時間分布は、明らかに異なっているが、両者はオーパーラップしているので、測定終了後にデータを解析して両者を分離することが必要となっている。しかし、ベイズ推定法による分離手法を適用すれば、データを収集する段階で、随時蓄積されていくデータを解析することにより、ある確度にて中性子線/γ線の検出比をオンラインで評価・表示することが可能であると考えられる。この機能は、ポリエチレン内張型反兆陽子比例計数管をサーペイメータとして使用する場合に、特に有用な機能であると考えている。 また、開発中のシステムを、ホウ素中性子捕捉療法中性子場の線質評価に利用することを検討する。すなわち、現在、いくつかの加速器ベースのBNCT場が構築されつつあるが、使用される加速器は、サイクロトロンや直線加速器など異なっており、形成される中性子場にも個性が出てくることが予想される。その場合、もっとも特性が異なるのは高速中性子成分であると考えられる。高速中性子成分と低速中性子成分が混在する場合、前者のみを選択的に評価することが理想的であるが、一般的な減速型の熱中性子検出器では両者の分離に手間がかかり、場合よっては精度も低下する。ポリエチレン内張型反兆陽子比例計数管では、高速中性子成分にしか感度をもたず、γ線との弁別も可能であるので、BNCT中性子場の特性評価に利用できる可能性がある。
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