研究課題/領域番号 |
25600146
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 |
研究代表者 |
本田 洋介 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 助教 (40509783)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | レーザー / 共振器 / 電子ビーム |
研究概要 |
高繰り返しで短パルスのレーザー光を外部共振器に蓄積し、電子ビームに変調を与えるに十分なピーク強度のレーザー電場を共振器内部に実現するのが本研究の目的である。連続(CW)レーザーや、10ps程度の長パルスのモードロックレーザーを用いたパルス蓄積は、既に確立された技術である。より高ピーク強度を得るには、短パルスのモードロックレーザーへの適用が必要である。たとえば、100fs程度の短パルスレーザーを1000倍に蓄積する場合、パルス間のパルス内位相の関係(キャリアエンベロープ位相(CEP))の問題が表面化する。CEPを制御してパルス蓄積を行う技術を確立することが、本年度の計画であった。 始めに、周波数80MHzの外部共振器を用意し、自作の40MHzファイバモードロックレーザー発振器の出力を入力し、共鳴を観測した。パルスレーザーの蓄積に特徴的な共鳴包絡線の構造が得られるが、共鳴ピークの分布が包絡線にたいして非対称になる現象が確認された。これは、CEPが整合していないことを示している。 そこで、発振器外部に音響光学変調器(AOM)による周波数シフタを導入した。AOMはダブルパスの構成とし、共振器への光軸に影響を与えずに調整を行えるように、また調整レンジを稼ぐようにした。AOMの駆動周波数を変えながら、共鳴ピークを観測すると、包絡線内でのピーク分布がシフトしていく様子が確認され、CEPを整合させられることを実証した。 CEPを調整して短パルスレーザーを蓄積する手法が確立した。次は、これを自動制御する必要がある。共鳴をスキャンして観測するのではなく、ピークに留まりながらCEPのずれを検出し制御する手法の確立を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標は、CEPの検出と制御の方法の確立であった。自作のファイバモードロックレーザーと、外部共振器を用いて、短パルスレーザーの蓄積の試験を行い、CEPの影響を観測することができた。さらに、CEPを制御するためにAOMを導入し、その駆動周波数によって共振器の共鳴信号が変化し、CEPを調整出来ている事を示す事ができた。おおむね、予定した成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、共振器の共鳴条件をスキャンし共鳴ピークの分布を観測することによって、CEPの影響を測定した。この方法によって、CEPの最初の粗調整を行うことができる。しかし、実用的には、共振器はある共鳴ピークを維持しながら使用する。そこで、スキャンすること無しにCEPの状況を検出し、必要ならばフィードバック制御する手法を確立しなければならない。 共振器の反射信号には、共鳴条件の影響が現れる。通常は、共鳴の制御のみに使用されるが、波長を分解して共鳴条件を観測するように、装置を構成する予定である。信号の波長依存性からCEPの状況が読み取れると考えられ、これを利用してフィードバック制御を試みる。今後は、まず検出装置を確立し、共振器の機械的安定化を対策した上で、制御の実験を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
概ね当初計画に従って進めている。本年度の目標がやや前倒しで完了したため、次年度計画の一部を開始するために余裕を見て前倒し支払い請求を行った。結果的に繰り越す額が生じたが、概ね当初予定どおりである。 当初計画にしたがって、次年度の研究を進める。本年度に一部前倒し準備した分を含めて、共鳴信号検出器の製作を行う。
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