研究課題/領域番号 |
25600147
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 尭洋 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30599113)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 超短X線パルス / X線自由電子レーザー / 超短パルス評価 |
研究概要 |
平成25年度は、X線自由電子レーザー(XFEL)SACLAのX線パルスキャラクタリゼーションを目的とした、相互相関計測に用いるための要素技術の開発、評価を行った。 (1)超短パルスレーザー光源の開発:単結晶に集光したX線を照射した場合には、 X線回折はX線のスペクトルを反映した構造をもつ。、その結晶構造にコヒーレントフォノンを振動を与えれば、得られるスペクトルにモデュレーションを誘起できると考えられる。コヒレントフォノンを誘起するためには、フォノン周期より十分短い超短パルスレーザー光源が必要とである。そのため、パルス幅40 fsのレーザー光をNeガスを充填したガラス中空ファイバーに集光照射することによってバンド幅拡幅を行い、チャープミラーによって再圧縮するシステムを構築した。得られたパルスをSPIDER(Spectral Phase Interferometry for Direct Electricfield Reconstruction)によって、計測したところ10 fsのパルス幅が得られ、BiやGaAsを相互相関計測に利用する場合に、モジュレーションを誘起するのに十分なパルス幅となった。最適化によって7 fs程度までパルス圧縮が可能である。 (2)高分解能X線検出器の開発: 空間デコードディング法をX線領域においてシングルショットで実施するための高空間分解能・高感度検出器の開発および評価を行った。カメラレンズと超薄Ce:YAGを用いることによって、シングルショット計測において、10μmの分解能を達成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は研究代表者に異動が生じたたため、XFELと超短パルスレーザー光を組み合わせた実験の実施に至らなかった。その一方で、パルスキャラクタリゼーションを実施するための個別要素技術の開発を行った。コヒレントフォノンを誘起するための超短パルスレーザー光源の開発および、シングルショット検出用高空間分解能X線検出器の開発など概ね目標を達成した。また、高空間分解能X線検出器は、X線を検出する素子をGaAsなどの半導体に交換することにより、X線像と紫外~赤外領域のレーザーの空間重なりや、過渡吸収を利用した両パルスの到着時間における、時間原点0計測など、空間、時間領域のアライメントに応用が可能であることが確認され,X線自由電子レーザー施設の標準装置として導入されるなど、副次的な研究成果も得られた。
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今後の研究の推進方策 |
個別要素技術である、近赤外超短パルスレーザーはコヒレントフォノンを誘起するのに十分短いパルス幅であり、高空間分解能X線検出器は、シングルショットかつ高分解能で、分光したX線を検出できる性能であることを評価できた。 今後は、 (1)X線パルスキャラクタリゼーション用システムの改良: フォノン周期が高速になるば、X線パルスを計測する際にも高時間分解能が期待できる。このような高フォノン周期、つまり、高バンドギャップを持つ試料に対応するため、超短パルスレーザーの短波長化を進める。また、時間分解能は空間デコーディング法における空間分解能によって、決定するため、空間分解能向上のため、X線検出器の光学系の改善とシンチレータの波長選択による分解能向上を目指す。 (2)空間デコーディング法によるコヒレントフォノンの計測: 超短パルスレーザーとX線を組み合わせた、シングルショットコヒレントフォノン計測を目指す。既に研究実績の概要で述べた様に、コヒレントフォノンを誘起、観測するための装置類は開発されている。そのため、これらを組み合わせた実証試験を実施する。 (3)超短パルスレーザーによるX線スペクトルへのモジュレーション: 一次元集光したX線を単結晶試料に照射することによって、X線のスペクトルを反映した回折X線が得られる。この結晶構造にレーザーによって振動を誘起し、得られるスペクトルにモジュレーションを誘起することを目指す。これらの要素技術を組み合わせることによって、XFEL光の時間波形の取得を目指す。
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