研究課題/領域番号 |
25600148
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
西堀 英治 独立行政法人理化学研究所, 放射光科学総合研究センター, 連携センター長 (10293672)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 放射光 / ナノビーム / ドメイン観測 / 非晶質領域 / 熱電変換材料 / 強相関電子系 / ボロン化合物 / 解析法開発 |
研究概要 |
本年度は、ナノビーム回折の現状に対する調査と、熱電変換材料、ボロン化合物、フラーレン関連物質、などの放射光粉末、単結晶X線回折の研究を開始した。 世界的な状況を調査するため、X-ray Scienceのゴードン会議に参加し、表面界面、デバイスなど様々なナノビームを使った構造研究を調査した。その結果、測定手法開発の側面がまだまだ強く、実材料の研究に展開できている状況ではないことがわかってきた。 ナノビームを使った研究を進めるために、結晶より大きなサイズの高次構造を制御することで性能が向上する熱電変換材料、結晶周期だけの情報では欠損サイトの存在のために物性の解釈が難しいボロン化合物、室温近傍で金属絶縁体転移を示す強相関電子系ナノ粒子の実験的研究を開始した。 また、計算機環境を整備し、ソフトウェア開発を開始しした。ナノサイズのコヒーレントビームを使って結晶の周期性を無視して回折データを計算できるシステムのプロトタイプを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず、計測法開発を主とした本研究を進めるに当たり、物質科学で重要なテーマの試料を確保することができた。この点は順調に進んでいると判断できる。ドメイン制御による高性能熱電材料の創成やナノ粒子のサイズ制御による相転移温度制御などナノサイズのビームが力を発揮する魅力的なテーマを始められたことは順調に推移していると考えてよい。計測法開発については、計算機の購入を当初は予定していたが、それを取りやめ、開発環境の拡充に力を注いだ。結果的に、計算機の初期納入に伴う手間を削減することができた。一方で、ナノ計測の他の手法を含めた様々な学会、研究会に出席し、手法を物質科学に適用するための情報を収集した。電子顕微鏡や、軟X線分光などライバルとなる手法が多いものの、厚さ方向の情報が得られる、内部がわかるなど硬X線ならではの強みがあることも判明した。手法開発は海外でかなり進んでいることも分かった。情報収取と環境整備の観点で本年度は順調に推移したと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、実際のデータ測定、解析に力を入れていく所存である。理研およびSPring-8の共同利用ビームラインで定常的に100nmのビームが利用できる実験ステーションが増えてきているためそれらの利用を開始する。試料については、まず熱電変換材料と強相関ナノ粒子を用いる。ボロン化合物については、原子番号が小さく散乱能が低いため空気散乱を最大限提言しないと研究遂行に支障が出ることが判明した。この点については、方法を模索しつつ他の材料の研究を進める。一方で、ビームサイズが小さくなると、試料の温度変化に伴い試料位置が変化しビームが当たらなくなること、冷やして霜が少しつくだけでもその微小な霜から強い回折強度が得られてしまうなどナノビームならではの実験上の困難さも判明してきている。高温、および室温近傍で機能を示す材料を選んでいるためこれらの困難さを避けて研究が進められると期待している。手法開発については現状の開発をつつける。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、計算機の購入を計画したが、既設計算機資源の有効活用に利用し、その分、3年に一回開催されるナノビーム回折と関わりの深い国際会議への出席などを積極的に行うようにし、情報の収集に努めた。このため、物品費が抑えられ、旅費が多くなる事態となった。 次年度以降は計画通りに進めていく。ただし、実験関係の消耗品の購入費用が見積もりよりかかるためそれらに本年度の繰り越し分を充てることとする。
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